投稿者: demo

  • 会社設立エピソード:番外編

    阪神大震災をきっかけに田村さんと再会し、「せっかく助かった命だから社会のために使おう」と会社設立を決めたことは、「ASCA創立メンバー対談」の記事でもお伝えした。
    準備を含めたその一年間の舞台裏をここに番外編として紹介する。

    『小さな会社の作り方』という本を買い、設立のための1000万円をまず準備したものの、経験もなく、手探りである。お金をどうするか、事務所をどうするか、何をするのか。
    当時私は35歳、名刺も持たない一人の若い女性に誰もオフィスを貸してくれないし、銀行だってお金を預かってくれない。コピー機一台をリースする許可も簡単に下りず、ないない尽くしでへこたれそうになったことも。

    田中直隆著「小さい会社のつくり方」

    それでも、「捨てる神あれば拾う神あり」で、管理会社を説得してくださったビルの守衛さん、「面白そう」と話を聞いてくれた銀行の担当者さん、いろいろアドバイスしてくださった公証人の先生や、私が作成した定款に異議を唱えた法務局の担当役人に対して助け舟を出してくれた別の担当者さんなど、どれほどの人に助けられたかわからない。

    名前は、Alliance of Science and Communication Advancementの略語でASCAに。実際には、「聞きやすい、覚えやすい、海外にも通じる、日本的な文化や響きを持つ」名前を、と候補をいくつか挙げていた。田村さんと電話で話していた時に、たまたま新聞が手元にあり、「CHAGE&ASKAのコンサートがあるみたいですね」と言ったら、「私、ファンよ」と。「だったらアスカにしますか」と決まった。

    かねがね母親は、「お前には苦労が足りない」という理由で起業を反対していたが、田村さんとの出会いなどを話すと、「頑張りなさい」と。お祝いに送ってきてくれたのは、一冊の黒い簿記台帳。「経理が商売の基本である」という意味。

    会社を登記できたものの、どこから手を付けていいかわからなかった。
    大阪を代表する「くすりの町」である「道修町(どしょうまち)」も読めなかった。製薬企業のことも、薬のことも何の知識も経験もなく、まったくゼロからのスタートなので、何をどうしたものやら。

    まずは銀行口座の開設が必要である。銀行の窓口でいきなり、「大きな会社と取引するので当座預金口座を作ってほしい」と頼んだら困惑された。小切手を出せる当座がステイタス、と根拠なく思い込んでいた。支店長にプレゼンさせてもらい、結果的に当座を手に入れた。今から思うと世間知らず、恥ずかしい話である。

    製薬メーカーの人や研究者は皆英語ができるものの、きちんとした英文ライティング、英語プレゼンテーションの勉強をする機会がない、とよく聞いていたので、それならプログラムを作ってセミナーをしよう、と考えた。当時プルーフリーダーをしてくれていたカナダ人と田村さんを講師にして、会議場の一室を借り、なんとか頑張って教材を作った。そのチラシを、(今ならできないが)大学の研究室の郵便受けにばらまいた。実務的な内容だったからか、受講生の方々に喜んでいただき、その中の数人はクライアントとしてその後もつながることとなったので、大成功だった。それでも、このときに割いた時間とエネルギーは相当なものだったので、続けることは断念したものの、手ごたえはあった。その経験が、今のASCA Academyにつながっている。

    最初にもらった入力の仕事でエラーが発覚し、大いに怒られた。少額の仕事だったが、休日も皆で頑張った仕事だったので、そのクライアントの会議室で土下座した。どうしてもお金を支払ってほしかったのだ。請求書を目の前で破られた。お金を支払ってもらう重要さをここで学んだ。

    マニュアルのレイアウトの仕事を受け、ひと月Wordで編集をしたことがある。途中でPCの調子が悪くなり、データが消えたら大変なので、そのままPCを抱いてパソコン屋さんに持って行ったこともある。新しいPCを購入し、何とか事なきを得た。この仕事のおかげでWordの編集をマスターし、お金ももらえたのでありがたい仕事だった。

    ある製薬会社から、毒性試験の英訳の仕事をさせてもらう機会を与えられた。私にとっては全くチンプンカンプンだったが、田村さんにとってはお手の物。高い評価を受けて継続して翻訳を行い、結果的に、海外はもちろん日本でも承認され、今でも市販後の仕事でお手伝いさせていただいている。そのクライアントには本当にお世話になり、多くのことを学ばせていただいた。この薬剤がなければ今のASCAはなかっただろう。今でもその薬剤番号は私のおまじないである。

    最初の一年は、知り合いからのご祝儀仕事でなんとか踏ん張ったが、もちろん大赤字で、毎月支払い日には胃が痛くなった。だから、25日はいまだに嫌いである。
    私や田村さんの給料は税理士からすぐにストップがかかり、それでも支払いのために、自分のなけなしの貯金で補填し、それでも賄えない時は田村さんに借金をお願いしながら、しのいでいた。当然、最初に用意したお金はあっという間になくなった。だから、よほどお金に余裕がある人でないと起業は勧めない。

    それでも、多くの人たちの励ましのおかげで今がある。本当にありがたいことだといつも感謝している。

  • パートナーの声:高田さん

    ASCA has been my most valued partner for the majority of my 45-year career in the language services sector. Why do I say this? ASCA’s commitment to quality and customer satisfaction is what I truly value. Placing priority on quality is key to delivering translation documents that are not just fit for purpose but that excel in serving the needs of our demanding end-users.

    Through ASCA and its commitment to quality, I was able to work with clients who had time to listen and who wanted only the best, even if it meant various discussions via comments in the document margins and numerous subsequent revisions. Cost and speed, important though they are, were not the only overriding concerns. Sharing ASCA’s values and sharing clients’ values enhanced my translation experience.

    I also felt that ASCA was warmly human and responsive in communication. Not everything in our work correspondence has to be businesslike, impersonal and humourless. We are not translation robots. We thrive on human interaction with company staff and other partners. Just a small comment on the weather, or a report on what you did at the weekend, or even a reaction to current events could make all the difference in adding the human and caring touch, which is of universal importance and value.

    Looking back at my translation work with ASCA, a lot of enjoyment came from being assigned some surprising and unusual work, considering ASCA is an agency mainly handling medical and pharmaceutical documents. The prime example was a script explaining how the Kyotei boat race worked and how you could place your bets. Besides, I recall horseracing, post cards, recipes, narration about college facilities, high-spec electronic devices and hair wax! Learning about something new and trying to convey that to someone else in English, that gave me intellectual satisfaction and sense of purpose.

    On a practical and detailed level, what probably created most difficulty for me was clients making revisions to the original text halfway through the translation process. Sometimes even changing one word could impact not only that sentence but the whole paragraph, with knock-on effects on other parts of the document. Especially tricky could be a change to a key word. Re-reading, re-wording, and re-editing were all required, causing delay and sometimes compromising style and flow.

    In its infancy, business translation focused too much on the words written on the page. What I mean is that the clients, the agents and the translators were all engrossed in getting the words and phrases “right” and did not realise what was actually required to achieve this in addition to linguistic competence. Everything has a context. The translator has to have as much contextual information as possible to produce the best translation for the particular document. What is the writer trying to convey first and foremost? What specific result does the client want? Where and how is the translated document going to be circulated? Who needs to read the document? These are some of the questions that must be asked before engaging with any translation. Context building, research and information gathering are essential, but sadly were often omitted in the sheer haste of meeting the deadline. Through my years with ASCA, I think we were able to change our mindset so that we could take a more macroscopic approach to our work.

    Zooming out, the world of translation is undergoing a sea-change. How do we ride out the present tides and how do we prepare for the future? In my retirement speech addressing ASCA staff and translation colleagues, I highlighted two key words, adopt and adapt. We need to be discriminating but we should be ready to adopt and not resist change or challenge. While preserving linguistic integrity, we should use our human ingenuity to create better results. We still have a lot to teach AI. We should teach it well and we should adapt it to our advantage.

    We may so easily get overwhelmed and consumed by the work in front of us. However, our physical and mental well-being must come uppermost in our list of priorities. Without a healthy mind and body, there is no translator nor translation. Take your 5-minute break, stretch your legs, open the window… find a friend to talk to, go for a walk up the hill, dip into the pool… read a book, look at a painting, fold some paper! My parting advice to translators is, look after yourself well in the same way as you look after the words you craft. My request to the wider ASCA community is, remember that although translation is about changing words between languages, it has a more far-reaching impact in many ways than is obvious. Translation should be executed with unwavering commitment to human values and to the pursuit of superior quality.

    ASCAは一緒に成長できるパートナーの方を募集します。
    医学・医薬分野における翻訳・ライティング市場において、医学研究の進歩に伴う専門性の高度化への対応と、グローバル化に伴うスピードアップが求められています。ライフサイエンス分野におけるTotal Solution Provider No.1を目指すASCAのビジョンを達成するために、ASCAとともに成長していける方を求めます。

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  • リニューアルオープン!「ASCA Academy ライティング講座eラーニング」

    医薬・ライフサイエンス分野のライティング技術を学ぶASCA Academy ライティング講座が、eラーニング形式になって本日よりスタートします!

    第一弾は全16回の「論文コース」。ジャーナルに投稿できる論文を「最後まで一人で書ききれる!」ようになることを目指して、プロのメディカルライターとして活躍中の布施雄士氏が、学術論文の執筆テクニックを体系的に解説します。

    eラーニングで時間や場所を選ばず、ご自分のペースで学習できる、新しいASCA Academy ライティング講座を皆さまのスキル向上にお役立てください。

    <内容>
    第1回】論文を執筆する上で 真に必要なスキルとは?(無料講座)
    *ライティングの本質を知って一歩進みだしましょう。

    https://youtu.be/QtH5vYHGtj8?t=1008

    第2回】査読のプロセスを理解しよう
    *論文執筆のゴールは何でしょう?ゴールとそのプロセスを知りましょう。
    第3回】IMRADとは? 論文はなぜこの形式で書くのか?
    *論文は「なぜ」この形式で書くのか、実用的な考え方を学びましょう。
    第4回】書き始める前に考えよう! 研究で得られた「アチーブメント」
    *最も伝えたい情報は何かをまず固めて、論文を書き始めましょう。

    学びたい気持ちを応援!
    手頃な価格でeラーニングを始めよう!
    <受講料>3,300円(税込)/1講座


    ※5月31日までにお申し込み・決済完了分。
    通常価格:4,400円(税込)/1講座
    ※第1回は無料で視聴いただけます。

    <視聴可能期間>
    申し込み完了時から14日間
    (購入時から14日後の同時刻まで、繰り返し視聴いただけます。)

    お申し込みはこちらから
    ご利用案内

    <今後の配信予定> 
    *内容や順番は変更になることがあります。
    配信予定:5月下旬~6月上旬
    第5回:骨格の組み立て方
    第6回:パラグラフの基礎知識
    第7回:Introductionの書き方
    第8回:Discussionの書き方

    ◆配信予定:7月中旬~7月下旬(第9回~第12回)
    ・Method、Resultの書き方
    ・引用文献や謝辞について
    ・Abstractの書き方

    ◆配信予定:8月下旬~9月中旬(第13回~第16回(最終回))
    ・論文執筆で使える構文や話法の小技
    ・論文執筆に関するよくある疑問 など

  • パートナーの声:西村さん

    翻訳者になられたきっかけを教えてください。

    農学部を卒業したあと、食品会社の研究所に勤めながら、翻訳学校に通っていました。それがちょうどASCAの立ち上げの頃で、講師だった田村さんに声をかけていただきました。

    西村さんが翻訳したものを見ていると、常に読み手を意識していらっしゃることが文書から伝わってきます。

    実務翻訳なので、表現に凝る必要はないということはわかっているのですが、翻訳学校時代は一文にこだわって、お風呂の中で考えたり、1日寝かせたりしていました。他の人も同じだと思いますが、1つの専門用語を翻訳するのに、図書館に行って文献を調べました。一時期自分なりに、クライアントごとの辞書を作ろうとしたこともありますが、長い開発期間の中で一本化されていく用語もあれば、変化していくものもあって、難しいですね。その中で、クライアントやASCAさんが作成していただいた用語集などの参考資料は非常にありがたいです。過去にないほど情報処理のスピードが求められる時代ですが、内容をじっくりと考える、エンドユーザーに向けてわかりやすく書く、という姿勢はできるだけ忘れないようにしたいと思っています。

    品質もスピードも両方兼ね備えていらっしゃいますが、家庭との両立ってどうされていますか。

    在宅でできるのが強みですね。表現が特に難しい箇所など、料理や買い物の行き帰りも訳語を練りながら、思いついたらPCの前に座るということもあります。逆に、英日翻訳の英語の文書内に誤りがあって、たとえば文章と表内の数値が合っていないとか、動詞がないとかで解釈不能、そういうときは、気晴らしのために少しPCから離れて、家のことをします。

    印象に残っているお仕事はありますか。

    最初のころ、定期的に論文のアブストラクトを翻訳する仕事をしていて、新しい知識に触れて、知的好奇心が満たされる機会が多くありました。それがないとこの仕事は続けられないので、また論文翻訳があればぜひ依頼してほしいです。
    他には、日本人特有の謝罪文の翻訳をしたときです。文字通り訳したらネイティブに「こんなに何度もapologizeしない!」と指摘されてしまい、簡潔にして納品したら、クライアントに「何度も、あっちでもこっちでも謝る文章にしてほしい」と言われました。やはり、文化の違いは難しいなと思った出来事です。
    つい最近のことですが、以前だったら絶対に使わない表現、たとえば、「ある患者にある副作用が発現する」と表現する際に、患者を主語に動詞developが文書全体にわたって使われていました。この動詞は病気を主語にする場合しか使ってはいけないと習ったのですが、今はネイティブが見てもOKなのでしょうか。また、以前は日本語に訳していたものがカタカナでの使用が標準になっていることも多くあります。言葉はコミュニケーションの道具だから、どんどん変化していいものだとは思いますが、基本には忠実に、そして常に新しい情報にもアンテナを張っていければいいなと思います。

    今後の希望や目標は?

    朝起きた時に「今日締め切りあったっけ?」をもう30年やっているので、1回辞めてみたいと思うこともたまにありますが、基本的には翻訳を生涯の仕事としていきたいと思っています。コロナ下で翻訳の講師の仕事が減る中、人と話すことでインスピレーションももらえますし、表現法の勉強にもなるため、他の言語の勉強も始めています。フランス語でシャンソンを歌ったりもして楽しいです。

    ASCAや石岡さんへの要望・メッセージをお願いします。

    ASCAは機械翻訳を早い段階で取り入れていて、医薬に特化したのもいいですよね。なんでも屋になっていたら、ここまで来ることはできなかったと思います。東京に支店を開設することになるとは思いもしなかったですが、石岡さんはあれだけパワフルな人だから、当然の流れだったのかもしれません。スウェーデンにいるときに、「時差のおかげで、西村さんに頼んだら、こっちが目覚める頃に翻訳できあがってるからいいわ~!」と元気に言われて、つくづくすごい人だと思いました。とにかく、お話しているだけでこちらも元気がもらえるバイタリティに溢れた方です。

    残念に思うことは、昔はクライアントと翻訳者の距離が近く、意思疎通が直接的にできていたのに、最近はそうではないことです。翻訳者の中には、翻訳が終わったらあとは翻訳会社に任せます、という考えの人もいるようですが、クライアントと翻訳会社のスタッフ、翻訳者など皆でひとつのものを一緒に作り上げるという発想を持てるような関係が良いと、わたしは思っています。
    言葉を仕事にしていますし、関わるみんながコミュニケーションを大事にする意識を持つようにしたいです。自動でできるところは機械に任せてスピードアップさせて、その代わりコミュニ―ケーションをとったり、人が考える部分に時間を使いましょう、という考え方で仕事ができたら理想だなと思います。

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  • パートナーの声:萩原さん

    翻訳者になられたきっかけを教えてください。

    石岡さんとはASCAとして独立される前からすでに10年くらいお仕事をしていました。石岡さんから最初にもらったお仕事は、中東からの研修生向けセミナーの講師でした。何の経験もなかったので、何でもやります!と引き受け、事前資料をもらって猛勉強して本番に臨みました。他には電機メーカーに出向して翻訳をしたり、議事録作成や通訳もしていました。そんな感じで機械・IT関係の経験を身につけていったので、ASCAに登録してからは医療機器の翻訳をするようになりました。

    ホントいろんなことをされてますね。

    尊敬する先生が退官されると聞いてどうしても授業を受けたくて大学院に通った時期もありました。それをきっかけに辞書の編纂にも関わり、出版時に名前も載せてもらいました。さらに論文も書いていました。とても忙しかったけど、充実していました。
    ただ、できると思って引き受けた仕事がどうしてもできなくなってしまって「もう限界!」とメールを送ったことがあります。事あるごとに、いまだに石岡さんにそのことを話題にされています。すみませんでした!

    ASCAの仕事で思い出に残っている仕事は?

    医療機器マニュアルの翻訳業務です。いろんな意味で印象に残っています。2回ほど工場見学に行かせてもらったのですが、(自分が翻訳している)機器が思ったより大きいなぁとか、ここに立って人が作業しているんだな、とかもわかって、とても勉強になりました。
    ただ翻訳するうえで困ったこともあって、それは、一つのパラグラフの中で「視点がどんどん変わる」、つまりその一文が、人間がすることなのか機械がすることなのかがわからない、ということです。でもそのことを質問してもクライアントから回答が来ないんですよね。仕方なくコメントをつけて納品しましたね。

    最近の変化は?

    ずっと翻訳だけをしてきましたが、去年からあるプロジェクトで翻訳後のチェックもするようになりました。最初は翻訳と同じくらいの労力がかかっていたのですが、最近は、かなり慣れてきました。

    チェックを始めて翻訳に変化はありましたか?

    苦手意識があった英日の翻訳力が上がった気がします。いろんな表現の型を見ることができますし、翻訳者が落としやすいところもわかるようになったので、翻訳するときに気を付けようと思うようになりました。また、今はネットでいろいろ調べられるので、手間を惜しまず、固有名詞など、情報の裏取りを綿密にするようになりました。

    チェックをすることで、翻訳力が上がるというのは、とても興味深い話ですね。ただ翻訳の経験があるとチェックでもつい修正したくなりませんか?

    そこは注意して必要以上に修正はしないようにしています。また、チェックではミスは拾えるけど、翻訳したもの以上の文章にはならないと思うので、翻訳者の立場として、翻訳の段階でどれだけ完成度の高いものができるかということが重要なのだと再認識できました。

    今後の希望や目標は?

    実は2-3年前になんとなくしんどいなと思っていて、さらに翻訳の魅力を教えてくれた先生が引退すると聞いて、「自分ももう辞めようかな」と思ったことがありました。でも今はとにかく現状維持です。そのためにも知識は増やしたいし、いろんな力を向上させたいと思っています。今はMT+ポストエディットが当たり前になっているので、その良し悪しを見極める力と、正しいかどうかだけではなく流れを意識するということは、人にしかできないことだと思うので。

    ASCAへの要望・メッセージ

    ASCAは参考資料をちゃんとクライアントからもらってくれるし、優先順位も伝えてくれます。バックアップ体制って各社違うのですが、翻訳後にある程度社内で確認・対処していただいている印象があるので、それは続けてほしいです。
    また今更ですが、翻訳の仕事を始めて10年くらいたってから「ちょっと仕事が粗いのよね」と言われたことがあります。もっと早くに言ってほしかった~と思いました。黒歴史です(笑)。何かしらのフィードバックがないとそれで良いと思ってしまうので、経験とか気にせずにどんどん言ってください。

    ASCAは一緒に成長できるパートナーの方を募集します。
    医学・医薬分野における翻訳・ライティング市場において、医学研究の進歩に伴う専門性の高度化への対応と、グローバル化に伴うスピードアップが求められています。ライフサイエンス分野におけるTotal Solution Provider No.1を目指すASCAのビジョンを達成するために、ASCAとともに成長していける方を求めます。

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  • パートナーの声:杉浦さん、三原さん

    ASCAに登録されたきっかけを教えてください。

    杉浦さん
    翻訳学校のメディカルクラスに通っていました。三原さんと同じクラスで、製薬業界の仕組みや基本的な医学用語などを教わっていました。すでに翻訳の仕事をしている方や医師を目指している方などいろんなバックグラウンドの方がいて、いろんな話が聞けて面白かったです。
    あるとき、石岡さんが授業を見に来られて、「アスカコーポレーションという医薬を専門とした翻訳会社です。興味があったらトライアルを受けてください」とおっしゃいました。トライアルで数名選ばれたあと、石岡さんとの面接があり、選んでいただきました。どうやったら翻訳者になれるかなぁと考えていたレベルだったので、初めてお仕事いただけたときはすごく嬉しかったのを覚えています。1999年頃だと思います。

    最初のお仕事は?

    三原さん
    最初の仕事はメディカルの出版社から依頼されたNeuroscience nursingの翻訳でした。

    杉浦さん:わたしも一緒です!

    三原さん
    最初syncopeという単語が出てきて、それを調べていくところから始まったんです。検索サイトも今のようなものではなく、ダイヤルアップ接続をしていたので、調べたい単語をあらかじめメモしておいて、それをまとめて調べて、慌てて接続を切るみたいなことをしていました。図書館にも行って調べていました。

    杉浦さん
    そうそう!でも調べることがとても楽しかったです。最初のうちはASCAに通いながら教えてもらい、資料も見せてもらいながら、当時いらした先輩に厳しく赤をいっぱい入れてもらいました。何をどうしていいかわからず、わたし何も頭に入ってない・・・と思いながらやっていました。たぶん1年から1年半くらいそんなふうに仕事をしていたと思います。

    三原さん
    初めのころは翻訳の仕事ってどういうふうに動いているのかわからないから、石岡さんに「週1回通ったらいいよ。教えてもらえるよ」って言ってもらえて、とても安心して仕事ができると思いました。

    週に何回か出社する以外はご自宅で翻訳されていたんですね。

    杉浦さん:そうですね。CDが宅急便で送られてきました。

    三原さん:フロッピーのときもありましたよね。

    印象に残っているお仕事は何ですか?

    三原さん
    初めてやった英訳の仕事です。田村房子さんが「参考資料もたくさんあるから、やってごらんなさい」って言ってくださいました。いろいろ見ながらやりましたが、それを田村さんがごっそり直してくださって、類似案件をいくつかやっていくうちにその直しが少しずつ減っていくのを見るのがとても嬉しかったです。細かい字で丁寧に修正内容を紙に書いてくださいました。今でもその紙原稿は大事に取ってあります。
    Bloodの仕事も印象に残っています。毎回監修の先生の赤が入った原稿が戻ってくるのですが、その修正を見て単語帳を自分で作ったりしていました。とても有難かったです。

    杉浦さん
    CIOMSです。昔は原稿がFAXで来て、数時間で翻訳する、という形でした。いろんな会社から、英訳と和訳の両方が大量に来ていて、覚えているのは、お医者さんが書かれた走り書きの英語のコメントがよくわからなくて(笑)。少量だけど急ぎなので、結構大変でした。おかげで有害事象をMedDRAで調べて訳すのがすごい速くなりましたね。

    三原さん
    出社したときは、チェックの仕事もやっていました。同じプロジェクトにかかわっている人同士で翻訳とチェックを交代でするのですが、お互いにやったものなので、質問などやりとりもできて、とても勉強になりました。

    横にいて直接やりとりできるっていいですよね。

    三原さん
    今だとメールだけなのでそれが難しいですよね。チェッカーさんってどんな人かもわからないので、なんとなく「やってちょうだい」みたいになりますよね。

    今はScienceの仕事もやらせてもらっています。治験関連と違って内容が多岐にわたるので、調べることも多く、楽しいですね。余分なことを調べて脱線してしまうこともありますが、新聞に載る前にその情報を得ることができるので、「わたし、これ知ってる!」みたいな気分です。

    仕事以外の思い出はありますか?

    三原さん
    ASCAの事務所の何回目かの引っ越しを、主人と一緒に手伝いました。石岡さんの旦那さんが社名のシールをきれいに貼っておられたのを覚えています。

    杉浦さん
    忘年会で1年間のお礼としてアロマのディフューザーをもらったことがあります。そのときのPMさんがすごく酔っ払った状態で、「杉浦さーん」って呼んでいたような記憶があります。そのPMさんからはクライアントからの愚痴も聞いていました。仕事もたくさんいただいていましたけど。

    杉浦さんを信頼していろいろ悩みを聞いてもらっていたんでしょうね。

    杉浦さん
    大量の翻訳依頼が重なって来ていましたが、それをそのPMさんと一緒にやっていて、間に立つPMさんは大変ねと思いながら聞いていました。でもあのときの薬剤は何年も関わらせてもらって、CSRをはじめCTDの翻訳もしたおかげで申請から承認まで追いかけることができたのは、いい経験でした。

    最後に一言お願いします。

    三原さん:
    MTをはじめ、新しい技術を取り入れて、いろいろ教えていただけて感謝しています。うまく活用しながらやっていきたいと思います。どんなにITが発達しても機械は助けてはくれるけど、人の手が入らないとだめだと思います。この仕事は経験がものを言う仕事だと思うので、要らないと言われるまではがんばって細く長く続けていきたいと思っています。

    杉浦さん:
    CAT Toolは治験関連文書の新規翻訳には便利です。MedDRAもいちいち調べるのは時間がかかりますが、それも用語として登録されているので、すぐに使えます。MTは間違えていることもありますが、全体としては時間短縮につながっています。技術の発達についていくだけでやっとの想いというのが正直なところですが、わからないときはすぐに連絡をしたらASCAのみなさん教えてくれるので、助かっています。新しいことを知ることができるのも楽しいです。いま主人の両親に続いて自分の両親の介護をしながらやっているので、大変ですけど、やれる限り無理なくやっていきたいと思います。

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    医学・医薬分野における翻訳・ライティング市場において、医学研究の進歩に伴う専門性の高度化への対応と、グローバル化に伴うスピードアップが求められています。ライフサイエンス分野におけるTotal Solution Provider No.1を目指すASCAのビジョンを達成するために、ASCAとともに成長していける方を求めます。

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  • ASCAで行ってきた様々な研修の様子を写真と共に紹介!

    2018年2月:国際センスを鍛えよう(シンガポール)

    社員を連れての海外旅行はさすがにハードルが高いと思っていたが、ビジネスのハブであるシンガポールなら行けるかも、と。お世話になっているシンガポールの翻訳会社に行って、ASCAをプレゼンしたり、先方の話を聞くことで海外とのビジネスのヒントになれば、とも考えた。お互い若いスタッフが多かったこともあり、すぐに打ち解けた。ランチの時、何に一番困っている?との質問に、シンガポールの会社の若手は、「適切な翻訳者が見つからない」と。古今東西、翻訳会社の“困った”は、翻訳者探しなんだと皆で納得した次第だ。

    セントーサ島のマーライオン

    私のサラリーマン時代の仕事仲間がシンガポールの人と結婚して家庭を持っている。会議通訳者として二人の子供を育てながら世界を飛び回っている女性であるが、その彼女に現場で講演してもらい、親睦会を持った。二人の住み込みの家政婦さんを雇い、家から嫁にも出したというから驚く。そうした費用は減税対象になるというシンガポールの制度は羨ましい限りである。無重力の宇宙船に乗る体験や水族館など楽しいアクティビティも盛りだくさんだったが、やはり目玉は「マリーナベイ・サンズ」ホテルに泊まり、夜中に屋上のプールで泳いだこと。

    セントーサ島のシー・アクアリウム

    “多様性”を目指すなんてレベルでなく、“多様性”が普通のこの国は強い、と再認識した研修だった。

    2022年10月:ASCAの結束を高め、毎日前向きに過ごそう(大阪舞洲)

    コロナ禍で社員との交流が一気に減り、大阪本社に行ったことがない、上司に会ったことがない、などの声も聞こえ、皆で集まる機会を探っていた。2025年には大阪で大阪・関西万博が開催されるし、以前Disneyで研修したので今回はユニバーサルスタジオジャパン(USJ)にしようと。
    舞洲のホテルに集まって、まずはびっちり研修。新しく、品質/プロセス/パートナー/営業について考えるグループ活動制度を立ちあげたので、会ったことのないチームメンバーとの交流や、各部に分かれてそれぞれの戦略について模造紙に書きながら熱く盛り上がった。ASCAの総務部長はこうした勉強会の元スーパー講師なので、チームビルディングはお手の物。新しく立ち上がったASCAの機械翻訳システムも、役員、総務含めて全員が使い、ASCAのシステムのすばらしさに触れたりも。

    グループ発表の様子

    夜は屋外BBQ、飲んだり食べたり騒いだり。久しぶりに創業メンバーの田村さんや元総務部長も加わり、夜が更けるのも忘れるくらい大騒ぎだった。
    翌日は待ちに待ったUSJ。コロナが明けて皆考えていることは同じなのか、プレミアムチケットを持っていても長蛇の列。何はともあれUSJには魅力がいっぱい。

    黄昏ゆく空を見上げる創業メンバー

    USJのビジョンは、ゲストの期待を常に上回る「ワールドクラスの体験」。「NO LIMIT! Future for All」のスローガンのもと、すべての人々が「毎日を前向きなパワーで過ごせる」社会の実現を目指し、推進しているという。
    コロナ禍が終わって、これからが私たちの正念場である。前を向こう。

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    2013年9月:10年後のASCAを考える(東京とディズニーランド)

    東京事務所を三田のおしゃれな事務所に移転したのを契機に、お披露目を兼ねて東京に皆で集まろう、せっかくなので、各自の10年後のASCAを語ろう、とプレゼン大会をした。

    三田の景色。当時の東京支店はこの辺りに所在。

    猫カフェを新しいビジネスに、人事部長になって皆が楽しく働く会社を作りたい、などなど楽しいアイデアの発表ばかりで大いに盛り上がった。
    Disneyがなぜあれだけ人気なのか、とかねがね疑問で、調べてみるとスタッフの教育が大きいことがわかり、研修プログラムも事業としてやっていることを知った。なので「10年後を語る」の後はDisneyland Hotelにバスで向い、レインボーブリッジを渡るときなどは車中も大はしゃぎ。その翌日は皆そろってDisney Academyで「リーダーシップ研修」を。仕事のモチベーションをどう作るか、維持するのか、高めるのか、チームとして働く喜び、難しさなどをチームビルディング方式で教わった。皆が同じ目線で仕事すること、価値を共有することの重要性を改めて知るプログラムだった。

    トレーニング・ディズニーウェイ

    研修終了後は、Disneyで働くキャストと呼ばれるスタッフに同行し、研修内容を実践。お客様のカメラが落ちた時、最初にとる行動は、怪我がないかの確認。カメラが壊れたか、ではない。皆に楽しんでもらうためには何よりも安全を重視する、まさにDisneyマジックの原点である。解散後、誰もが大いに楽しんだのは言うまでもない。
     
    ちなみにDisneyの行動規範は、1.Safety(安全)、2.Courtesy(礼儀正しさ)、3.Inclusion(インクルージョン)、3.Show(ショー)、4.Efficiency(効率)。研修後、ASCAの行動規範を作ろう、と委員会を立ち上げた。皆が考えて作ったのが「1.情報管理、2.礼儀正しさ、3.早く正確に」である。翻訳会社なのに「正確さ」は一番ではない。むしろ、正確であることは前提なので、当時社内で情報セキュリティのISOを取ったこともあり、何よりも「情報管理」を最優先しようとしての取り組みにつながった。研修が大きな財産を作ってくれたのである。

    2015年9月:明日は来る(東北石巻)

    東北地方を中心に襲った東日本大震災のショックは今でも鮮明だ。映像から流れてくる津波の画像や流される人たち、原発問題など、今も復興が終わらないほどの大きな惨事である。会社として、物資を送ったりボランティアをすることも考えたが、あまりに事が大きすぎて、行動をとれずにいた。そんな時、社員の一人が、皆で石巻に行きませんか、と。雄勝(おがつ)町という所にある、廃校をリニューアルした施設に皆で自炊し、泊まって、翌朝ボランティアをする、というプログラムだった。
    仙台駅に集合し、バスで雄勝に。
    車窓から見えるのは、映像でしか見ていなかった震災の跡地である。木もない、建物もない、人もいないし何もない。バスの中も静まり返っている。
    着いた施設は「MORIUMIUS(モリウミアス)」。森と海と明日へ、というコンセプトである。
    着いた後、大きな部屋で笑いヨガをみんなで。今回の企画を紹介してくれた社員が笑いヨガのインストラクターで、さすがにうまく盛り上げてくれた。
    夕飯のご飯を炊くのに火をおこすことから。慣れない作業なのでなかなか火がつかないチームも。それでも最後は皆うまくいき、満点の星空の下、皆で食べた夕食がどれほど素晴らしかったか。

    MORIUMIUS LUSAIL.

    二日酔いの社員もいたが、翌日は早朝に起き、皆で灯台に。そこから見える海を見ていて、大きな震災があったことを感じさせない雄大な自然がそこにはあった。
    朝食の後は皆でボランティア。8割の建物が倒壊し、200名以上が津波に流されてしまった雄勝の地で、何ができるのか。漁船で使う網を整える、掃除をする、草取りをする、程度のことしかできない。大したことではないが、住民たちが、ありがとうと感謝を伝えてくださったり、飲み物やお菓子をくださって、大感激だった。
    最後、津波でほとんどの学生や先生たちが流されてしまったという大川小学校に立ち寄らせていただいた。校舎の一部が残り、記念碑が立ってはいるものの、当時の状況の説明を聞くにつけ、泣いていない社員はいなかった。

    森、海、明日、このコンセプトに従った今回の研修旅行である。雄大な自然の偉大さと怖さを痛感した二日間だった。どんなに困難でも、必ず朝が来る、明日が来る。

    2016年10月:希望の海で芸術センスを磨く(瀬戸内海)

    3年ごとに開催される「瀬戸内国際芸術祭」に皆で行って芸術センスを磨こう、と瀬戸内海の小島、「犬島」に行くことに。岡山駅で待ち合わせ、電車、フェリーでいざ。まずは玄関口の「直島」に着くと、草間彌生の「かぼちゃ」アートが出迎えてくれた。
    源平、室町などの歴史の舞台を経て、北前船の母港、朝鮮通信使による大切な大陸文化の継続的な蓄積の通路として栄えた瀬戸内海地域であるが、人口減などで活力が低下している状況が。美しい自然と人間が交錯することで瀬戸内の島々が活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の「希望の海」となることを目指す、というこの芸術祭のコンセプトに共感しての今回の参加だった。

    アーティスティックな瀬戸内

    廃校をリニューアルした施設で自炊。ハローウィンだったこともあり、仮装で大いに盛り上がった。犬島には「家プロジェクト」によるユニークな建物がいたるところに。また、銅の精錬所だった建物を「犬島精錬所美術館」として近代化遺産をアートにしてしまったのだから興味深い。
    古い建物をアートに変えて、自然との融合の中で世界中から人を集めるプロジェクトだ。
    翻訳やライティングの仕事も“アート”だと私は常々思っている。答えのないサービスだからこそ、相手にどう響くか、感動を与えられるか。この難しい問いに少しは向き合ってくれるようになってほしい、と願っている。

  • 【従業員の物語】今こそ大事なのはコミュニケーション -鈴木さん

    鈴木さん
    プロフィール:
    2009年ASCAにPMとして入社し、数々のメガファーマを担当。その後2012年にチェッカーとして業務開始。現在は案件QCだけでなく、大型案件での最終とりまとめや新人チェッカーのフォローなども担当。

    ASCAに入社したきっかけを教えてください。

    前職は、ホテルでコンシェルジュ、そのあと留学を経て、愛知県の自動車メーカーで翻訳をしていたのですが、大学時代を過ごした関西で働きたくて探していたところ、アスカコーポレーションに出会いました。面接では、1時間くらい石岡さんと雑談をしていた記憶があります。あとで他の方の面接でもそんな感じだったと聞いて、石岡さんはこうして相手の雰囲気を見ていらっしゃるのだなと思いました。

    印象に残っている仕事は?

    あるクライアントの超大型案件(100ファイル以上)を数か月かけて翻訳しました。当時はPMが4人で、お互いを助ける余裕もなく、完全に1人だけでスケジューリングして、手配して、納品したのですが、かなりの達成感がありました。でも不思議と内容はまったく覚えていません。

    当時のオフィス、会議室の風景

    また別のクライアントの仕事も一生忘れられません。いろんな薬剤の治験関連文書の翻訳依頼がたくさん重なって来ていた時期があったのですが、とにかく手配するだけで精いっぱいでした。翻訳者さんにもチェッカーさんにもかなりタイトなスケジュールでお願いしてなんとか納品を終えましたが、結果ミスが多発し、大きなクレームにつながってしまい、東京まで謝罪に行きました。納期の交渉もせず、依頼全てを受けていた自分に責任を感じました。

    仕事以外での思い出は?

    他のPMとチェッカーさんの4人ぐらいで居酒屋さんに飲みに行って、2軒目で朝まで雑魚寝してしまったことがありました。ただそんな場で、仕事やプライベートの話など、熱く語り合いました。そんなふうにPMとチェッカーさんとの距離が近く、部活みたいで楽しかったです。

    PMからチェッカーに転向したのはなぜ?

    ファイルの中身を読み込みたかったからです。クライアントから質問されてもPMの立場では答えられず、いつもモヤモヤしていて、ファイルの内容を理解できるようになりたい、という思いが強くありました。チェックの仕事をするようになって、文書がどのように構成されているか、どこがポイントかもよくわかるようになりました。また、こんな参考資料が欲しいとか、こうしてはどうかなどPMの方に提案できるようにもなりました。ただこの仕事は奥が深くて、いまだに慣れなくて時間のかかることも多いです。

    ASCAの仕事で変わったなと思うことは?

    フィードバックが少なくなった気がします。また以前は、規模の大きな案件や複雑な仕事はとくに、直接話をして業務の背景や内容を正しく理解したうえで取り掛かっていたのですが、今はメールだけのことが多いですね。もちろん、説明してくださるPMの方もいらっしゃいます。メールだけだと指示内容がよくわからないこともあり、そういう場合は仕上がりにも影響するので、直接お話しして全体像を把握できたら望ましいです。

    これからのASCAを担うスタッフへのメッセージ

    前の話ともつながるのですが、良いものでも悪いものでもフィードバックがあれば、モチベーションにつながります。
    案件数も多いので1つ1つについて行うのは難しいかもしれませんし、日常業務で忙しいと思うので、例えば大型案件や複雑な案件だけとか、フィードバックがあるといいですね。あれどうだったかなと意外に気になっているので。
    機械化が進んでAIが発達する今だからからこそ、やはりコミュニケーションって必要ですよね。システマティックに進められることも重要だし、システマティックになり過ぎないようにすることも重要、バランスが大事だと思います。でもそれこそがASCAの良いところです。チェックの仕事は1人で完結しようと思えばできてしまうので、孤独を感じることもあるのですが、だからこそ余計にPMとのコミュニケーションは大事ですし、モチベーションにもつながるのではないかと思います。

  • 【従業員の物語】翻訳の基本はいつの時代も変わらない - 青木さん

    青木さん
    プロフィール:
    創立当初よりASCAに入社。約10年間社内で翻訳、チェック、またその周辺業務をこなした後、フリーランスの翻訳者として20年。文系出身のバックグラウンドを生かして医薬関係者と患者を結ぶ橋渡し的な文書において非常に高い評価を受けている。

    ASCAに入社したきっかけを教えてください。

    仕事をしながら翻訳学校に通っていたのですが、そこで講師をされていたのが田村房子さんで、そのご縁で声をかけていただきました。会社には週3回出社して最初はチェックから、その後時々翻訳をするようになりました。

    ASCAでの最初の仕事は何でしたか?

    毒性試験報告書の日英翻訳のチェックでした。当時は社内に6人くらいで、翻訳者、コーディネータなどの区別もなく、みんなで毎朝ミーティングをして、いろんなことを決めながら協力して1つの案件を仕上げるという感じでした。

    とても少人数だったんですね。

    最初はこの八千代ビルの4階にいたのですが、とにかくオフィスが狭くて、すぐ後ろが窓ですごく寒くて、会社に来てしもやけになりました(笑)。会議室もなかったので、いろんな話が筒抜けでした。少し広いオフィスに引っ越すことになりましたが、PCや机の移動も自分たちでやりました。
    古い時代の話をし出したらキリがないですが、PCが壊れたら台車に載せて、淀屋橋にある大塚商会さんまで運んでいましたし、プリンターがリボン式だったので、翻訳は終わっているけど印刷が遅くて納品できないということもありました(笑)。

    八千代ビル

    翻訳そのものについてはいかがですか。

    自分は特に医薬のバックグラウンドがなかったので、創薬がDrug Discoveryということも知らなくて、田村さんにめちゃくちゃ怒られました。ワクチンでは「副作用」じゃなくて「副反応」という言葉を使うということも教えてもらいました。知らなくてすみません、としか言いようがないのですが、そうやって「絶対に間違ってはいけないこと」を叩き込まれました。

    創立間もない頃なので、本当にいろいろあったと思いますが。

    ある時、英訳の依頼があって、ある程度意訳してもいいですよと言われ、英訳して納品したら、原稿に赤字で「嘘つき」って書かれました。その赤い文字を覚えているので、おそらく石岡さんが、手書きの修正原稿をクライアントからもらってきてくれたのだと思います。衝撃でした。意訳しすぎて本意じゃなかったんですよね。再納品するときは、もう一度ネイティブの方に見ていただいて、なんとか無事に終えました。

    それはかなりの衝撃ですが、他にもありますか。

    「とにかくやってみる」という楽観的なシナリオで引き受けたら、蓋を開けてビックリということが多々ありました。でもこうした失敗を経ていくうちに、事前に確認すべきことや決めておくべきことがわかるようになりました。仕事をスムーズに進める上で、事前の丁寧な準備がとても大事だと思います。状況にもよりますが、「とりあえず走り出す」仕事には、危険な香りがします(笑)。

    まだまだ出てきそうですね(笑)。

    広告代理店が関西一円の1年間のイベントを紹介する、というお仕事がありました。内容は非常に興味深いのですが、イベント主催者や地方自治体に電話やファックスで確認をとりながら、という作業が非常に煩雑でした。当時はインターネットが今ほどではなく、直接英語名称を聞くしかありませんでした。図書館や本屋さんまで調べに行ったりもしました。
    和歌山県の写真集の仕事も印象的です。歌人の道浦母都子さんが寄稿してくださっているのですが、その短歌を英語にするとか!難しかったですが、どうやってやったのかもう覚えてないです。石岡さんと和歌山県庁まで行って、帰りにサンマ寿司を食べたのは覚えているのですけど(笑)。
    化粧品の翻訳をするときは、海外の化粧品の商品ラベルを見たくて、その頃北浜駅にあった三越の化粧品コーナーにも行きましたね。

    尽きないですね。

    どうしても外せないのはScienceの仕事です。毎週配信の、日本の報道関係者を対象としたニュースリリースだったのですが、専門家だけでなく一般読者の関心を引くような内容で、とても刺激的で興味深かったです。小惑星イトカワを探査した「はやぶさ」の論文が掲載された際には、Scienceからプレスカンファレンスを日本でやりたいという電話があり、コレスポンディングオーサーに連絡を取ったことが特に印象に残っています。

    楽しいのですが、そろそろ最後にメッセージをお願いします。

    翻訳とはどういう仕事で、どういうプロセスで進むかは、今も30年前も本質的に大きく変わらないと思います。コーディネータ、翻訳者、チェッカー、レイアウト担当者など、プロセスに関わるすべての人が、自分の仕事を点ではなく、全体の流れの中でとらえる発想が必要と思います。たとえCAT ToolやMTが導入されてIT化が進んだとしても、本当の意味で効率よく仕事をするのなら、自分だけでなくほかの人が何をしているのかを見ること、みんなが少しずつお互いのことを気にかけることが大事だと思います。
    クライアントにご満足いただける品質という共通の目標に向かって、気持ちよく、効率よく仕事をしたいですね。そのためにも、一緒に仕事をする人たちとの率直なコミュニケーションと気遣いを大切にしたいと思います。

    一緒に成長できる社員を大募集しています。
    私たちASCAは、医薬・ライフサイエンス分野における、Total Solution Provider No. 1を目指しています。その実現に向けて、広くさまざまな経験やバックグラウンドを持った人材と働きたいと考えています。

    https://www.asca-co.com/recruit/index.html