新薬のグローバル開発を迅速化する中で、日本語から英語へ、またはその逆への翻訳フローがボトルネックになることがあります。株式会社アスカコーポレーション(以下、ASCA)では、お客様の医薬品開発を加速するために、AI翻訳など最先端技術の開発に取り組むと同時に、既存の技術と組み合わせることにより、納期短縮と精度向上を目指しております。
プロトコール翻訳の課題 
従来は、医薬品のプロトコール翻訳を依頼された際は、専門の翻訳者チームを組んで、約40,000単語のプロトコールを25日以上かけて翻訳し、さらにクロスチェックを含めると35日ほどかかっていました。しかし、最近では納期の短縮が求められることが多く、専門性と精度を保ちつつ翻訳の納期を短くすることが課題となっています。
AI翻訳の導入による課題解決 
従来の人手翻訳を主体とした翻訳でもプロセスは確立されていますが、関わる翻訳者の労力や資質に依存するところが大きく、持続可能性やキャパシティの点で問題を抱えていました。
https://note.asca-co.com/n/n03f880b67aec 
AI翻訳への期待と限界 
プロトコール翻訳には、まず正確性が求められます。これは文章の意味や数値・表記などの情報が適切に再現されているかという点です。さらに、専門用語や規制(GCP)を踏まえた誤解のない表現、一貫した用語使用、医療機関向け文書として相応しい文体、社内テンプレートやスタイルガイドへの遵守、見出しを含むドキュメント構造の妥当性、そして書式やリンクの保持など多岐にわたる要素も重要です。
AI翻訳技術は近年大きく進歩し、高精度で意味的に正確な訳文を生成する能力を持つようになりました。特定分野向けにカスタマイズされたAI翻訳モデルでは人間特有の入力ミスを防ぐことも可能であり、業務効率化の面では無視できないメリットが存在します。
これらの点から考えるとAI翻訳は非常に便利ですが人手翻訳やその周辺作業を完全代替するわけではありません。特に正確性担保は人間しかできず顧客やユーザーへ信頼性高いサービス提供する上で欠かせません。
出典:AIKO SciLingual Webinar AI翻訳を取り入れたプロトコールの翻訳プロセスと効果~医薬・医学特化型AI翻訳と人による治験関連文書の翻訳業務~(2022年6月22日) カスタマイズAI翻訳を組み込んだ翻訳プロセスの構築 
効果的な翻訳作業のためには、AI翻訳の役割と人間の役割の明確化が必要です。そして、足りない部分を補完していくためにツールやシステムを使うことが理想的です。
ASCAではAI翻訳を組み入れた翻訳プロセスを翻訳マネジメントシステム(以下、TMS)の導入によって構築しました。TMSの導入により、用語集や翻訳メモリなどの言語資産を活用することが可能になり、これにより過去の翻訳結果をスムーズに引き出して用語やスタイルを過去の翻訳と一致させることが可能になります。
出典:AIKO SciLingual Webinar AI翻訳を取り入れたプロトコールの翻訳プロセスと効果~医薬・医学特化型AI翻訳と人による治験関連文書の翻訳業務~(2022年6月22日) カスタマイズされたAI翻訳エンジンの構築 
さらに、ASCAでは、翻訳プロセスの改善を加速化させるために、医学・医薬分野に特化させたAI翻訳エンジンを構築しました。
TMSの導入に加え、カスタマイズAI翻訳の構築により、これまで32日間を要していた「翻訳+クロスチェック」の期間が19日に短縮され、全体では納期を40%圧縮することが実現したのです。
ASCA独自構築の医学・医薬特化のAI翻訳エンジン「SciLingual」 
  
おわりに 
本件では、一人でも多くの患者の命を救うための新薬開発の迅速化を目指し、ASCAでは、そのために医学・医薬に特化したAI翻訳技術を活用し、翻訳業務の効率化を実現することができました。重要なのは、AI翻訳と人間が相互に補い合えるような形でAI翻訳を運用することだということです。
ASCAでは、今後はご依頼いただく翻訳案件だけでなく、製薬企業の社内、医薬の開発現場でも利用可能なシステムの開発と普及に取り組んでまいります。
医薬・医学に特化したAI翻訳プラットフォーム「AIKO SciLingual」 
https://www.asca-co.com/special/aiko/ 
AIに関する取り組みについての最新情報 
https://note.asca-co.com/m/m750a0ed88ad7