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  • Science Update 19 July, 2024 No.2

    サイエンス誌(Science)に掲載された日本人著者からの日本語タイトルとコメントを紹介します

    Periodic cytokinin responses in Lotus japonicus rhizobium infection and nodule development
    ミヤコグサの根粒菌感染および根粒形成における周期的なサイトカイニン応答

    SCIENCE 19 July, 2024, Vol 385, Issue 6706

    マメ科植物の根粒共生は、根粒に共生する窒素固定細菌が宿主に窒素を提供する有益な特徴があります。今回の研究では、マメ科植物であるミヤコグサと共生菌との相互作用が、宿主側が生み出す周期的応答によって制御されており、サイトカイニンが周期性の形成に必要なことを発見しました。

    大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 共生システム研究部門
    国立大学法人 総合研究大学院大学 先端学術院 先端学術専攻 基礎生物学コース
    征矢野 敬

    https://www.science.org/doi/10.1126/science.adk5589

  • Science Update 19 July, 2024 No.1

    サイエンス誌(Science)に掲載された日本人著者からの日本語タイトルとコメントを紹介します

    Live chromosome identifying and tracking reveals size-based spatial pathway of meiotic errors in oocytes
    生きた卵母細胞内の染色体の識別と追跡により、分配異常における染色体サイズに基づいた空間経路が明らかになる

    SCIENCE 19 July, 2024, Vol 385, Issue 6706

    卵母細胞において小さな染色体が分配異常になりやすい原因は長らく不明でした。今回の研究では、生きた卵母細胞内の個々の染色体を同定し、その動きを追跡する技術を開発し、染色体のサイズに応じた空間的な配置が分配異常に寄与していることが判明しました。

    理化学研究所 生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム
    竹之内 修
    北島 智也

    https://www.science.org/doi/10.1126/science.adn5529

  • 機械翻訳で翻訳業務を進化させる:中外製薬株式会社様

    中外製薬株式会社様は、2020年に「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表され、全社的にデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する先進的な取り組みをされています。特に翻訳業務ではいち早くカスタマイズエンジンを導入し、弊社と共に新技術の活用に積極的に取り組まれています。 

    本日は、信頼性保証企画部 翻訳マネジメントグループ(TMG)の齋藤様に、会社全体のDXに対する取り組み内容や、機械翻訳の導入とその効果についてお話をお伺いします(組織名称、職位等は取材当時のもの)。


    中外製薬株式会社様におけるDXの取り組みについて

    まずは、御社におけるDXに対する取り組みについて教えていただけますか。

    中外製薬株式会社の目指す姿は、「患者さん中心の高度で持続可能な医療を実現する」ということです。この目標に向かって事業活動を通じて中外製薬にしかできないイノベーションを創出しています。そのキードライバーのひとつがDXであり、会社としても強く明確なメッセージを打ち出しています。デジタル基盤を強化し、新薬創出から、翻訳も含めた後方支援的な企業活動もデジタルを使って効率化していくということです。 

    この目標を達成するために、社員1人ひとりにDXに対する意識を持たせ、ボトムアップでDX活用を推進できる組織文化や仕組み作りを全社的に行っています。その取り組みのひとつがデジタルイノベーションラボ(DIL)です。DILでは、まず全社員からデジタルを活用したアイデアを募ります。そして審査を経て採用されたアイデアについて、外部のサポート等を得ながら実現に向けて具体的に取り組んでいきます。また、デジタル人財育成のためにCHUGAI DIGITAL ACADEMY(CDA)を立ち上げ、「データサイエンス」、「デジタルプロジェクトマネジメント」に関する教育研修を行っています。この研修は9ヵ月間のコースで、日常業務と並行して行っています。

    中外製薬株式会社 信頼性保証企画部 齋藤 敦 様

    またDX推進に向けて「デジタルトランスフォーメーションユニット(DXユニット)」という部門を新設すると共に、各部門・各機能にもDXをリードするスタッフをおいて、各部門が主体的にDXを推進できるような体制をとっています。

    デジタル化について、外部のベンダーおよび教育機関などとどのように協働されているか教えていただけますか。また医薬品開発とITという異なる文化の融合についてのお考えをお聞かせください。

    CDAも、外部のコンサルタントの協力を得て教育プログラムを作成しました。新しいDXユニットのトップには、実際にIT業界の方を招聘して組織作りから関わっていただきましたし、実務面ではIT系のエキスパートを中途・新卒採用しています。DXユニットに所属する社員のかなりの割合がITバックグラウンドのあるスタッフです。昔とは様変わりしましたね。 

    医薬品は患者さんに安全に使用していただくことは絶対に譲れません。そのためには、研究・開発・試験を1つひとつ確実に検証を重ねていくべきものです。一方でITの世界には、ベータ版でもプロトタイプでもいいのでとりあえず使ってみて改善していく、という考え方があると伺っております。ただそこは、医薬品の専門家とITの専門家が互いの強みをうまく融合させることができれば理想的ですし、今後「患者さんのために」という目的に立ち返りながら、新しい価値創出に繋がる協力ができるようになればと思っています。

    TMG内でのDXの取り組みについて

    TMG様では、翻訳業務に関連してどのようなDX推進の目標設定や取り組みを行っていますか。また、現時点でどのような成果や課題がありますか。

    TMGとして掲げている目標は、「品質は保ったまま、これまでよりも効率的に、つまり短い時間と少ないリソースで成果を出す」ということです。翻訳の部分は御社を始めとした翻訳会社様にお願いしているわけですが、TMGとしては、コーディネーション業務の生産性をあげていきたいと思っていて、短中期的には、使っているリソース(要員や時間など)の50%削減を目標にしています。ひとつには翻訳管理システムの導入、またこれと並行して、Power Automate等の利用により、人手で行っている業務を自動化・迅速化できないかと思案中であり、一部実装したものもあります。
    業務効率化をモニタリングする目的で、それぞれの業務にかかった時間を毎日記録していますが、そのデータを見ると少しずつ成果として現れています。 

    御社との機械翻訳に対する取り組みについては、「治験実施計画書」では納期や品質など数字で現れるものについて一定の評価が得られています。また「非要求事項」を検討することで、レビューの目線合わせ、つまり公式文書として整えるためにどこまでレビュー修正が必要なのかということについて再考する良いきっかけになりました。

    効果を測定し、それを可視化すること、さらにそれが継続的に行われていることが大変素晴らしいと思います。TMG様として、他部署様との連携や情報共有などでお感じになっていることはありますか。

    アスカコーポレーション 開発部 早川 威士

    この機械翻訳に対する取り組みは、TMGとしても社内では一日の長があると思っていますので、翻訳業務を進化させるために、全社的にそのノウハウを情報共有したり、発信したりしていくという役割を果たしていかなければならない、と考えています。 

    また先ほど「非要求事項」の話をしましたが、依頼部門、とくに翻訳が多く発生する部門と翻訳品質に関する意見交換を行う、という試みに最近着手しました。最終目標に向かって、「現実的にどうすれば最適化できるか」について話をしていきます。実際に翻訳成果物を使用する人たちが納得するものをつくることが大事ですから。

    他に、新しく進めたいと思われていることはありますか?

    現在TMGが全社で発生する翻訳案件のかなりの部分を担当していますが、中外全体の翻訳関連業務が効率化されるような体制づくりも考えていきたいと思っています。それを支えるための新しい技術として、翻訳管理システムも有用ですし、案件管理の面からも何かシステムが必要かと思っています。

    今後の要望について

    テクノロジーを活用することで解決したい課題や、弊社が提供できるサービスや支援について、ご希望や要望があればお聞かせください。

    アスカコーポレーション ソリューション事業部 渡邉 奈生

    まずは納期を可能な限り短くしていただくことです。クライアントとしても非常に助かります。また、具体的なアイデアはありませんが、単に納期が短縮されるだけではなく、業務プロセスに付加価値がつけばいいなと思います。細かな話になりますが、翻訳メモリや用語集も人手を介さずに簡便にブラッシュアップやメンテナンスできるようになると良いと思っています。
    私どもでは思いつかないような新しいご提案を期待しています。

    最後に、治験が始まってから承認されるまでの過程における翻訳の役割について、翻訳者や翻訳業務に携わる方々へのメッセージをいただけますか。

    弊社における私たちのグループの仕事そのものがそうですが、医薬品の開発から上市、ファーマコビジランスに至るまで、グローバルで行うには翻訳なしでは前に進みません。やり方は変わっていきますが、みなさん縁の下の力持ちとしてそれぞれの役割を果たしていただきたいと思っています。それが、わたしたちの業界においては、「患者さんに一日も早く薬をお届けする」ということにつながりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

    中外製薬の齋藤様(中央)とASCAメンバーの2人(両サイド)

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    https://note.chugai-pharm.co.jp/

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  • 人とAIがともに育つ:SMPアソシエ株式会社様

    SMPアソシエ株式会社様は、2019年からCIOMS翻訳サービスをご利用いただき、現在ではAIKO SciLingualも導入いただいています。「アソシエ」はフランス語で「パートナー、仲間」の意味です。ASCAもクライアント様のパートナー的存在でありたいと考えており、勝手ながら共通点があると感じています。

    CIOMSフォーム作成業務では、限られた時間の中で迅速かつ正確な情報の報告が求められます。そこで今回は、AIソリューションを含む弊社のサービスをご利用いただいているSMPアソシエ様にお話を伺いたいと思います。
    インタビューにお答えくださったのは、安全性情報部の丸尾様と木下様です。

    CIOMS翻訳について

    まずはCIOMS翻訳を弊社へご依頼いただいた背景を教えてください。

    木下様
    当時、弊社の社内翻訳スタッフは3人体制で、そのうち1人は新人でした。そうした状態で、海外からの報告量が増えることになり、どうしたものかと思案していたところに、ASCAさんからタイミングよく提案がありました。リーズナブルな価格で翌日納品に対応していただけることが決め手となって、契約しました。

    ASCAにご依頼いただいてどういった変化がありましたか。

    木下様
    以前は翻訳をメインにしていましたが、「翻訳から開始するプロセス」と、「翻訳いただいたものをチェックするプロセス」の2段階体制になりました。
    海外の提携会社との対応件数が増えてきており、そのための時間を捻出したいと思っていたので、翻訳担当者の手が空くこのような2段階体制は非常にありがたいことでした。
    ずっと以前に機械翻訳を導入しようと試みたこともありましたが、機械に学習させるためにフィードバックが必要でした。例えば、“May 1st”が「1番であろう」と翻訳されるので(正しくは5月1日)、日付の表記を単語リストに登録するといった内容です。ただ、すべてのパターンを登録することはできず(登録してもそれ以外の表記だとうまく翻訳されない)、半年で断念しました。

    SMPアソシエ株式会社 安全性情報部 木下 信一 様

    木下様
    また、それまでは1件1件業者さんに依頼していたのですが、これだと毎回納期や値段の交渉をする必要があり、これも大変な手間でした。「面倒だから依頼したくない」→「自分たちで対応する」→「結局人手が必要になる」という状況でした。
    ASCAさんに依頼するようになって、事前に合意した料金で24時間後に納品され、ファイル授受システムが用意されているので都度暗号化する必要もない、これは便利だなと感心しました。

    丸尾様:
    わたしは他部署から来ましたが、この仕組みは省力化・効率化されていて、とても面白いシステムだと思いました。

    AIKO SciLingualについて

    AIKO SciLingualをご契約いただいていますが、その背景を教えていただけますか。

    木下様:
    CIOMS翻訳業務はすべてを外注しているわけではなく、定型から外れるものや納期が短いものは社内で対応していますが、そうした社内での使用がメインの目的です。
    ちょうど仕事量が大きく増えたときでもあったので、「使えるものは使おう」という感じで、すぐAIKOの導入を決めました。

    AIKO SciLingualをどのような時に使用されていますか?

    木下様:
    個人としては、海外とのやりとり・文献タイトルなどをさっとAIKOで訳してから、自分で修正する、といった感じで使用しています。自分では考えつかないような訳文が出てくることもあり、小さな業務でさっと使えるので、非常に便利です。人によっては、訳文の確認(いわゆる逆翻訳)に使っているようです。

    丸尾様:
    翻訳に使用する定型文や用語をすべてAIKOに登録してあるので、これまでのいろいろなファイルやメモから引っ張ってくる作業が減った分、楽になったと聞いています。日々の業務はもちろんですが、業務の引き継ぎにも役立つと思います。
    また、登録されたフレーズや用語集から引用してくるので、成果物に統一感が出る点がとても良いと思っています。

    全般的なところで感じられる変化はありますか?

    木下様:
    無料モニター期間中にフレーズ登録を行い、MedDRAも取り込むことによって、個人単位で管理していた情報が部内全体で共有できるようになり、「翻訳のゆれ」を解消することができました。
    翻訳という作業は、自分以外の人の訳文を見ることがとても勉強になるので、新人教育にもプラスになっています。翻訳はできないが英文のチェックは可能というメンバーにもチェック作業を分担することができるようになり、初報なら取り扱える人が増えましたし、互いにフォローしあって仕事の分担もできるようになりました。
    以前は3人の翻訳者で、翻訳もチェックもしていましたが、ASCAさんに翻訳を依頼したり、AIKOを導入したりしたことで、今は翻訳も行うメンバーが4人、チェックメインのメンバーが5人の体制です。AIKOを使うことで、翻訳が均一化され、人材も育っているので本当に助かっています。

    今後の要望について

    御社内の、AI技術(例:AIツール、マクロ等)の導入事例や、今後AI技術で解決したいことがあれば教えてください。

    木下様:
    ChatGPTに該当するようなシステムを、現在社内で実験中です。講演内容(スライド資料)をまとめるという仕事がAIでできないかと考えています。例えば、学会などで先生がご講演された内容から、報告者や患者の情報、併用薬、副作用などを抜き出して、項目ごとに分類し、それをひとつのフォームにまとめる、という業務がありますが、今は人が講演のスライド資料を見ながら行っています。項目にしたがって分類し、さらにNarrativeパートにある事実と医師見解を切り分け、時系列が前後している場合には正しく並び替えるといったところまでできるようであれば、ぜひ使用したいです。さらに、大きな矛盾や誤りを指摘してくれるような機能があると助かります。

    丸尾様:
    AIではないですが、期限管理や件数管理などにはツールを使用しています。先日、「効果的なプロンプトの書き方」をテーマとしたChatGPTのセミナーで、「短文で命令形を使うとよい」というお話があったのですが、「なるほど!5歳児と思ってやればいいのね!」と思いながら聞きました。

    SMPアソシエ株式会社 安全性情報部 丸尾 浩子 様

    弊社のサービスや全般的な対応について、ご意見やご要望があれば教えてください。

    木下様:
    月に1回のミーティングが役立っています。当初は、どのようにフィードバックをすればよいか迷いがありました。解釈の問題もあれば誤訳の問題もあるので、それらをひとくくりにしてファイルを渡してもうまく伝えられないと感じていましたが、これが定期ミーティングの実施によって解消されました。依頼分量が増えると、小さな修正箇所一つ一つを全てフィードバックすることは難しく、フィードバックできないまま溜まってしまっていました。それが月に1回ミーティングを行うようになり、特に気になった箇所のみをまとめてフィードバックするという方法に変わり、本当に必要なものだけを適切にフィードバックすることができるようになったように思います。

    丸尾様:
    ASCAさんは、翻訳会社でありながら機械翻訳エンジンそのものを販売する、とてもユニークな会社だと思います。
    AIを利用して空いた時間を、翻訳者さんたちが自己啓発に使って、今度はそれを仕事に還元していただけたら良いですね。AI技術も使われてこそ育っていくものなので、人とAIがともに育っていければと思います。
    互いに求めているものがわかり合える会社同士でありたいと思っており、成果物を納品いただくのはもちろんなのですが、それ以外の関係性もさらに継続していけることを今後も期待しています。

    定期ミーティングは私たちASCAにとっても、仕事の内容を振り返るよい機会になっています。また、ASCAではITに力を入れつつ、パートナーである翻訳者を大事にすることも両立させたいと思っています。さまざまな情報を絶えずキャッチアップしつつ、お客様とも意見をすりあわせながら、ニーズにお応えしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

    聞き手:
    株式会社アスカコーポレーション ソリューション事業部
    シニアプロジェクトマネージャー 福味 知嘉子
    プロジェクトコーディネーター 塩谷 美奈穂 

    SMPアソシエ株式会社様について

    https://www.smp-associe.com/

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    https://www.asca-co.com/30th/current_index.html

  • ASCA 30th記念 パートナー座談会 Part3

    座談会レポートもこれが最終回です。ここでは、「できる」か「できない」かは考えずに、「こんなふうになったらいいな」と思うことについて伺います。


    テクノロジーでできたらいいな、こんなこと!

    -急速にテクノロジーが進化する中、翻訳業務において実現してほしいことや改善したらいいなと思うことがあれば教えてください。

    三枝(以下、敬称略)
    一人で作業しているので、会話型のQAツールがあったら少し楽しくなるかなって思います。QAを実行すると同じような警告が上がってきますが、そんなとき「他のもOKしといてー」と言ったら「わかりました!」ってやってくれたら気持ちいいです。

    加藤:アシスタント的に、優しい音声でしゃべってくれたらいいですね(笑)。

    中西
    患者向けの文書で「ですます調」で翻訳するとき、うっかり「である調」にしてしまうことがあるのですが、QAで「言葉遣いが違うよ」と指摘してくれたら嬉しいです。CAT ToolはWordの校正機能には劣りますよね。漢字の変換ミスや、肯定と否定の間違いも、「内容的におかしくない?」と指摘してくれたら最高です。どうしても思い込んでしまっていて、素読みをしても気づききれないときがあるので、それを助けてほしいです。

    深野:「この分野の文書だとそれおかしいよ」とおしゃべりしてくれるとかですね。

    柏木
    近未来の映画とかでよく見ますが、ディスプレイ画面が自分の目の前にぷかぷか浮いていて、検索画面と翻訳ファイルが簡単に切り替えられたら便利かなと思います。きっと仕事の効率が上がります。

    加藤:会社のディスプレイがそうなったら、みんな独り言が増えるんじゃないですか(笑)。

    花渕
    これまでに経験のない種類の文書をチェックするときに、重要なところがピカピカ赤く光るような機能があるといいなと思います。信号機みたいに赤・黄・青のサインを出してくれるとか。

    平尾
    それは、タイムマネジメントに使えますよね。例えば赤がいっぱいあったら、このファイルのこの部分はチェックに時間がかかりそうだと予測できます。

    川合
    MTの精度もあがっているので、数字エラーのようなケアレスミスはほぼなくなってきています。ですので、おかしな日本語にアラートを出してくれたり、適切な代替案を教えてくれたりすると嬉しいです。

    平尾:リアルタイムで提案してくれると、その場で解決でき判断に時間をかけなくてもいいですね。

    畠山
    8社くらいのレイアウト業務を担当していますが、スタイルガイドやテンプレートが各社で異なるので、PMDAや国の機関が何かひとつに決めてくれたらいいのに、と思います。

    深野:プロトコルの英語版はICH推奨の共通テンプレートがすでにあって、ICFも完成目前らしいです。

    持田
    わたしの弱点を理解してくれて、「この前もこれ忘れてましたよー」とそっと言ってくれる機能がCAT Toolにあるといいなぁと。あと、1件のプロジェクトで、複数人が同時進行でファイル編集できたらいいなと思います。

    深野
    同時進行については、コミュニケーション機能がCAT Toolにあります。1件のプロジェクトを、同じ画面を見ながらパートナーさん同士で会話しながら進められたら、効率あがりますよね。

    加藤
    オンラインゲームの感覚でしょうか?作業時間も削減されますよね。今だとメールで質問するしかないので、そのメールを書く時間もそれなりにかかります。「ちょっと今いいですか?」って聞いて、「はい。お願いします」と、即時に問題が解決できたら嬉しいです。

    平尾
    ASCAとしては、皆さんの意見をうまく取り入れながら、皆さんとWin-Winで仕事ができるようにしていきたいと常々考えています。人にとっては面倒くさいところを、その部分が得意な機械がやってくれたらいいんですよね。そして、人が注力すべきところに時間をかけて、よりお客様にとって満足度の高い商品を提供できれば、みんなHappyになりますよね。

    まとめ

    加藤
    皆さんのお仕事の様子や工夫されていることなど、貴重なお話を直接伺うことができ、とても勉強になりました。また、日々翻訳業務に携わっている皆さんならではの新しいアイディアがどんどん膨らんで、話が盛り上がっていく雰囲気は本当に楽しくなりましたし、嬉しくもなりました。
    余談ですが、エアバス社の飛行機には「ヘッドアップディスプレイ」という透明なガラスのディスプレイが操縦席の前にあって、速度、高度、方位、姿勢などの情報が表示される機能が装備されています。特に、着陸時には視覚的に操縦士をサポートしてくれる技術がこれまでにも使用されていますので、自分の目の前にパネルが浮遊して、自由に移動させることで作業効率がアップするという未来は、そんなに遠くないかもしれません!
    今後ますますテクノロジーと人がそれぞれの役割をこなしながら一緒に成長していくことで、新たな未来が開ければ良いなと思いました。


    Part1の記事はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/nb37a42112673

    Part2の記事はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/n378a092c8b9b

    ASCA 30th記念サイト

    過去パート

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    現在パート

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    対談:

    テクノロジーで新しい翻訳の価値を創造する

    インタビュー

    「機械翻訳で翻訳業務を進化させる」中外製薬株式会社様

    「人とAIがともに育つ」SMPアソシエ株式会社様

    ASCA社員×コアバリューについて

    https://note.asca-co.com/n/n0d4ccf140966

  • ASCA 30th記念 パートナー座談会 Part2

    前回は「翻訳のプロセスの変化」についてお聞きしましたが、今回はそのプロセスの中で実践されている「工夫」と、機械と人との役割分担についてご意見を伺います。


    CAT Toolの活用方法

    -翻訳・チェックの精度や効率性、品質向上など、ご自身が取り組んでいる具体的な方策はありますか?

    持田(以下、敬称略)
    「正規表現をうまく使おう」キャンペーン中です。先日は、句点の有無に関するエラーを正規表現で検出できました。なるべく目視を避けたいところが他にもあると思うので、いまいろいろと模索中です。またソート機能(並び替え)もよく使用しています。1日ずっとチェックをしているとどうしても夕方には疲れてくるので、セグメントを単語数が少ない順にソートして、短い文だけをチェックする、といった具合です。体言止めの部分や柔らかい表現の部分といった文の種類に合わせて、ソートの条件を設定する、適切なソートの方法を選ぶということが大事だなと思っています。

    柏木
    わたしは画面だけを見ていると目が滑るというか、目で追っているだけになってしまいがちです。できれば紙に印刷して、手元において見ながらチェックしたいと思ってしまうのですが…

    三枝
    わたしはCAT Toolからバイリンガルファイルをエクスポートして、印刷はせずにタブレット上で作業するようにしています。タブレット用のペンを使って、数字は赤で〇をつけ、気になる箇所は蛍光ペンを引いたり付箋をつけたりしています。次にPC上のバイリンガルファイルを変更履歴付きで修正し、その後memoQにインポートし、最後に修正箇所を再度確認して、必要なコメントが入っていたら終了です。印刷をじっと待っている時間もなくなりましたし、原稿の処理も簡単ですよ。

    柏木:そうなんですね!わたしもやってみます。また困ったら教えてください。

    中西
    Wordベースのときは、「hypotension」と「hypertension」を訳し間違えるなど、あってはならないミスをすることがありましたが、MTにはそのような間違いはないので、CAT Tool+MTは助かります。化合物番号も数字が並んでいて間違えやすいので、CAT Toolに用語登録しておくととても便利です。

    川合
    以前にgとqの打ち間違いを見つけたときは、ドキッとしました。翻訳者さんが手入力されて、それが繰り返し使われてしまったのだと思います。 

    畠山
    全体のレイアウトを整えたあと、原文と本文を並べて確認するのですが、とくに部分的に改訂されている場合は、その箇所がハイライトされていることもあり、エラーに気づくことがあります。ただ、レイアウトという仕事でも、単位を気にしていたら単位だけに注目してしまい、記号などが目に入らなくなるので、翻訳やチェックをしている方は本当にいろんなことに気を配らないといけませんね。

    中西
    数字や薬剤名ってコピー&ペーストするのがよいとはわかっているものの、打った方が速いときもありますよね。そういうとき用語登録されているとQA機能でアラートを出してくれます。

    平尾:中西さんは作業スピードも上がっていますよね。分量が1500から2000word/日とかに。

    中西
    本当ですか?CAT Toolでは、まったく同じではなくても似たような文章もTMが参照できるので、自分が文書内で前に訳した箇所のTMも再利用しやすいですよね。自分が一旦確定したものが次にTMとして出てきたときに、タイプミスに気づくこともあります。
    「はは、」のように助詞が続いているような場合や漢字変換ミスなどは、Wordベースだと全体の確認のときにしか気づけないのですが、CAT Toolだと翻訳をしながら気づけるということもあります。前半を分納して先にチェックが開始されている状況で後半を翻訳していると、チェック担当の持田さんがTMを更新されていて、「なるほど」と納得して、修正TMを使うこともできます。

    平尾
    チェックと同時進行のときはTMがどんどん更新されるので、PMを介さなくても翻訳者さんとチェッカーさんの間でコミュニケーションがとられている感じですね。なんか一人じゃないなというか、温かいなと思います。

    機械による翻訳と人による翻訳の違い、そして両者の役割分担

    柏木
    memoQはQAを完了すると「よくできました」ってほめてくれて、そこそこ感動的ですよね(笑)。ただMTは、訳語の選び方、情報を出す順番、語句の係り受けなど、どうしても限界があるので、機械が得意なところで人の手間を省きつつ、大事なところに人が注力できるようになるといいなと思います。MTの得意な部分はMTに任せて効率を上げつつ、完成度を高めるために人間が細部にわたって細心の注意を払うことが、差別化につながっていくのではないでしょうか。

    平尾
    わたしはCAT Toolを使うことで、翻訳全体のクオリティはアップしていると思っています。書きっぷりの修正はpreferentialですが、preferentialではない、ぶれてはいけないキーワードの用語が合っていて、文章も成立している。これって最強のクオリティだと思います。

    小野
    参考資料が多いと、どの資料から用語を拾うのがよいのか迷うときがありますが、文書を漫然と見るのではなく、ポイントを決めて確認することで適切な用語を選択できます。QA機能があるおかげで、参考資料で用語や表現を調べることに時間が使えますし、場合によっては、学会ガイドラインを検索したり、その他の資料を見たりする余裕もできます。

    川合
    わたしはIBやPRTの改訂翻訳のチェックが業務全体の8割くらいなのですが、これらの文書ではいまもWordベースでチェックをしています。一方で、Webカタログのような内容の案件は、CAT Tool+MT翻訳のプロセスで対応しています。Webカタログは、原文の英語にないものを補ったり、日本語の流暢な言い回しが求められたりするので、CATやMTがあってもあまり役に立たず、機械と文書のミスマッチを感じています。

    加藤:CAT ToolやMTをうまく利用して、さらにそれをお客様と合意しておくことが重要ですね。


    まとめ

    皆さんの個別の取り組みには目から鱗が落ちる思いをしましたし、またこれらを共有することで新たな使い方を思いつくかもしれないと思いました。次回は、日常業務に「あったらいいな」と思うツールや要望についてお話を伺います。

    Part 3はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/n814b8abddbc7

    Part1はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/nb37a42112673

    ASCA 30th記念サイト

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    対談:

    テクノロジーで新しい翻訳の価値を創造する

    インタビュー

    「機械翻訳で翻訳業務を進化させる」中外製薬株式会社様

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    ASCA社員×コアバリューについて

    https://note.asca-co.com/n/n0d4ccf140966

  • ASCA社員とCore Value(コアバリュー)

    ASCA社員が働く上で大切にしている共通の価値観があります。それが「Core Value(コアバリュー)」。なんと社員によって生み出されました。所属に関係なく全ての社員に寄り添ってきたCore Value。新人~ベテランまで様々な視点でCore Valueを感じたエピソードを紹介します。

    そんなASCAのコアバリューはコチラ↓

    https://www.asca-co.com/company/mission-statement.html

    1.未来志向:過去にとらわれず、果敢に挑戦し続けます

    Q: ASCAで挑戦していることor挑戦し続けていることを教えてください。

    “製薬業界全体としても、自分がやっている仕事も、仕事で使うツールもどんどん変化していっているので、過去にとらわれずというか、仕事をやっている限り新しい仕事に挑戦し続けないといけない気がしています。”
    (メディカルライティング部 N.T)

    “お客様からの依頼を受けるだけではなく、お客様の目的を理解し、同じ目的を見ながら提案できるPMを常に意識しています。そのために、お客様の目的を理解するための知識と経験を重ねていっています。”
    (ソリューション事業部 H.S)

    “新しいこと(業務)にも、とりあえず挑戦してみる。”
    (ソリューション事業部 M.S)

    “入社してからまだ月日が浅いため、日々新しく覚えることが多く挑戦の連続です。今はまだ指示をいただきながら業務をこなしていますが、今後は自分からも何か提案ができるよう、さらに挑戦していきたいと思っております!”
    (ソリューション事業部 A.S)

    2.学ぶ姿勢:「科学大好き!」「もっと知りたい!」の心を持ち続けます

    Q.1: 今まで取り組んできて特に「おもしろい!」「難しいけどやりがいがある」と感じた業務を教えてください。
    Q.2: 業務内で学びになったこと、身についた知識をひとつ教えてください。

    “②治験薬と被験薬、同じようで違う意味など医薬専門知識を勉強会で学び、文書の誤りに気が付けたとき”
    (ソリューション事業部)

    “①翻訳業界で必要とされるIT技術に接する機会を持てたこと”
    (総務部 K.I)

    “①手間がかかる作業の自動化を実現した自社開発の業務ツールが多くあり、それぞれの処理内容の確認が楽しいです。”
    (開発部 H.W)

    “①肺がん学会の冊子作成に携わったとき、医師の方々の座談会に同席させてもらい、目の前で繰り広げられる会話がとても貴重で勉強になりました。
    またそれが最終的に冊子の形になることに達成感を感じることができました”
    (総務部 Y.I)

    3.「なんとかします」の解決力:諦めない、タフな仕事ぶりが自慢です

    Q:  達成感を感じた業務上のエピソードを教えてください。

    “PRTの進行において半日単位で進行したり、納品前再度見直しに時間をかけることとなったり、量が多く崩れたPDFをWordに整える作業にも取り組みました。これらの困難を乗り越えたときには、大きな達成感を感じました。”
    (ソリューション事業部 A.O)

    “年に1回、半年ほどかけて冊子を作成する案件で、途中スケジュールの遅延や予期せぬことが必ず起きるが、最終的に印刷物が完成したときに達成感を感じる。”
    (メディカルライティング部 K.N)

    “数百万文字のCTD英訳を半年ほどでクライアントレビューも含め、完成できたこと。レビューでの修正も軽微なものがほとんどで、クライアントからは、あれだけあった資料がみるみるうちに終わっていき、すごい早さだったと言っていただけた。”
    (ソリューション事業部 N.S)

    4.「さすが!」と言われるサービス:オーダーメイドのソリューション

    Q: 今まで嬉しかったエピソードや、やりがいを感じたエピソードを教えてください。

    “希望納期に間に合わせたことで、当局への提出が間に合ったとお礼を言っていただきました。”
    (ソリューション事業部 K.M)

    “クライアントから定期ミーティングの際に、ASCAもチームの一員と言っていただいたこと”
    (ソリューション事業部 A.O)

    “「ぜひASCAさんと一緒にお仕事がしたい」と言ってご発注いただいたこと”
    (ソリューション事業部 S.F)

    “難しい要望に、うちの専門性の高いパートナーさんをうまく組み合わせて解決できたとき、達成感を感じました”
    (メディカルライティング部 N.T)

    “かかわった薬剤が世に出て、困っている人の助けになると感じたこと”
    (開発部)

    5.自分も人も大切に:多様性を尊重し、人生と仕事を楽しみます

    Q: 上記コアバリューを、日々の業務の中で意識する瞬間があれば教えてください。

    “仕事に対する価値観はメンバーそれぞれに違います。ただ、その違いを否定せずに、個々の価値観を大切にしながらも、共通の目標に向かっていくことが大切と感じています。”
    (ソリューション事業部 H.S)

    “社員それぞれ個性があり、得意なこと・不得意なことも皆違うが、誰かが苦手なことは他の得意な誰かがカバーし、皆の力を合わせて一つの業務が成し遂げられているように感じる。”
    (ソリューション事業部 M.S)

    “常に人とコミュニケーションをとりながら仕事をする必要があるため、様々な人がいる中で、相手がどんな人であっても人とのコミュニケーションが楽しい。これはこの仕事をしているからこそだと考えると、とてもこの仕事が楽しい。”
    (メディカルライティング部 K.N)

    “自分の当たり前が他人の当たり前ではないをモットーに他者とコミュニケーションをとり、気持ちが通じ合ったこと”
    (開発部)

    そんな私たちに、”未来の宿題”をください。

    Q: これからASCAが乗り越えなければならない”宿題”は何でしょうか?

    “サービスそのもののの創出。翻訳やライティングといったコア業務がなくなる日がくるかもしれない、そんな未来でもパートナーや私たちが力をあわせて売れるものは何か考えること。”
    (メディカルライティング部 N.T)

    “AIに翻弄されるのではなく、主体的にうまく使いこなしていくこと”
    (総務部 K.I)

    “人材育成”
    (新規事業部 R.I)

    “技術革新による変化への対応”
    (ソリューション事業部 N.S)

    まだまだ載せきれないほど、コアバリューに対するASCA社員の想いは様々です。
    30周年を迎えたこれからも、コアバリューとともに丁寧にご依頼に取り組んでまいります!

    https://www.asca-co.com/30th/

  • ASCA 30th記念 パートナー座談会 Part1

    この30年間で翻訳のプロセスは大きく変わりました。ASCAでCAT Toolを導入した当初(約15年前)は、ほとんどの方が「使いにくい」とおっしゃっていましたが、バージョンアップした医薬特化型MTを搭載した現在では、「使いたい」という方が、「使いたくない」という方の数を上回るようになりました。今回は実際に日々業務に携わってくださる皆さまから、翻訳プロセスの変化についてお話を伺います。


    参加者:
    パートナー:柏木さん、川合さん、三枝さん、中西さん、畠山さん、花渕さん、持田さん
    ASCA:平尾(開発担当)、深野(Project Manager)、加藤(Project Coordinator)、小野(司会)

    記事内で出てくる用語一覧

    「CAT Tool+MT」の活用による翻訳プロセス

    -翻訳プロセスが、「WordやExcelベースでの翻訳」→「CAT Tool(+TM+TB)による翻訳」→「CAT Tool(+TM+TB)+MTを用いた翻訳」に変化してきていますが、この変化をどのように感じていますか?

    持田(以下、敬称略)
    ASCAにチェッカーとして登録した当初は出社していたのですが、まず日英両方の原稿を計100枚くらいA4印刷してから、チェックを開始していました。このWordベースで紙に印刷するやり方だと、もしも見落としがあったとしても「もっと集中します」「次がんばります」くらいしか言いようがないのですが、CAT ToolだとQA機能やソート機能などいろんな方法を駆使しながら、チェックができるという点が大きな変化だと思います。

    花渕
    Wordベースでチェックしているときは、数値のチェックが本当に大変でした。表内の数値などはCAT Toolだと横に並んでいて見やすいですし、QA機能も使えるのでかなり効率化されています。

    柏木
    Wordベースのチェックでは、1文1文確認したことがわかるように、しるしをつけていたのですが、どうしても見落としてしまうことがあります。CAT Toolだとセグメントで区切られているので、とりあえず大きく抜けることはないという安心感があります。ただ、最後に翻訳ファイルを生成して全体のレイアウトを整えるのですが、この修正に時間がかかるときがあります。最近では、CAT Toolでチェックをする際に同時に原文ファイルを横に開いておいて、自分が今どこを見ているかを確認しながら進めるようにしています。

    三枝
    わたしは皆さんに比べると経験が浅いのですが、CAT ToolではTMを検索するとよくヒットしてくる用語・表現などがわかるので、参考資料でどの語句に注目すればよいか、気を付けるべきポイントは何かなどがわかりやすいと感じています。Wordベースのときは文書全体を全力で見ないといけなかったので、重要なポイントに気づくことが難しく、ある特定の部分に意識が集中してしまうこともあり、全体を俯瞰することができないと感じていました。

    平尾
    確かにWordベースのチェックをしていた頃は、気になる用語を書き留めてExcelやメモ帳に記入して、最後にそれを1個1個検索して確認するということをしていました。でも書き留めるのをつい忘れたり、原文のバリエーションが多くて書ききれなかったりして、苦労したことを覚えています。

    -ここまでチェック担当者の方々のお話を聞いてきましたが、翻訳担当者として中西さんからのご意見をお伺いします。

    中西
    Wordベースで翻訳していた頃は、翻訳対象ファイル、参考資料ファイル(2~3種類)、また改訂翻訳の場合は前版ファイルを、それぞれ日英版Word(又はPDF)で開くので、全部で8ファイルくらい開いて作業しないといけなくて本当に大変でした。さらに、検索するためのWebブラウザも開きますし、変更履歴付きで翻訳しているとPCが重くなってWordが固まることもよくありました。今のCAT Toolを使った翻訳は非常に便利で、ミス・訳抜けを減らせますし、用語検索もできるので統一も簡単です。わたしがよく担当するA社の案件では、A社向けにカスタマイズしたMTを使ってプロジェクトを作ってもらっているのですが、A社特有の表現がそのままMTで出力されるので、この点もとても使いやすいと感じています。

    -カスタマイズMTのお話がでましたが、ここでPMの深野から実例を紹介してもらいます。

    深野
    実例としてご紹介するのは新規のプロトコル1本のケースです。下の表をご参照ください。

    CAT Toolを使うこと、さらにカスタマイズエンジンを加えることで、全体の納期はどんどん短縮されています。カスタマイズエンジンは半年に1回チューニングすることで、情報をアップデートしています。お客様レビュー後のファイルを指示に従って修正する「修正対応」という工程があるのですが、その対応をチェッカーさんや翻訳者さんにお願いしています。チェッカーさんや翻訳者さんには、この修正対応の際に気づいたことをPMに報告してもらい、これらのご意見をお客様にも共有・確認してもらったうえで、カスタマイズエンジンを含めたシステムに反映しています。翻訳環境を改善していくことで、さらに大幅に納期を短縮することを目標にしています。

    花渕
    わたしが担当する案件では、類似試験の類似文書をPMさんがTMにつけてくれています。ですので、それらに用語や表現を合わせた形で納品しているのですが、修正対応時に、お客様がそれぞれの文書(案件単位)によって、異なる修正をされることがあります。

    持田
    A社の仕事では、「前処理」という工程を入れているのですが、部門によって用語が違う場合やMT訳がTMと一致しない場合など、この「前処理」の工程であらかじめ統一すべき用語をTBに登録してから、次の「翻訳」の工程に進めています。

    中西
    事前に用語を登録してくれているので迷うことなく選択できますし、翻訳者としては、それ以外に必要な調査に時間をかけることができます。

    花渕
    前版でFIXしている用語でも時がたてば変わることは当然あるので、修正対応をした時点でそれらの情報をためておいて、次のエンジンの学習に利用する、という流れは大事だなと思います。今月は、ちょうど担当する案件で情報共有会があるので、最近どのようになっているか聞いてみます。


    まとめ

    CAT Toolは用語検索やQA機能がとても有用であるという一方で、クライアントの希望納期がどんどん厳しくなっているという課題もあがりました。次回は、CAT Toolをどのように活用しているかについて、さらに詳しくお話しいただきます。

    Part2の記事はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/n378a092c8b9b

    Part3の記事はこちら

    https://note.asca-co.com/n/n814b8abddbc7

    ASCA 30th記念サイト

    過去パート

    https://www.asca-co.com/30th/

    現在パート

    https://www.asca-co.com/30th/current_index.html

    対談:

    テクノロジーで新しい翻訳の価値を創造する

    インタビュー

    「機械翻訳で翻訳業務を進化させる」中外製薬株式会社様

    「人とAIがともに育つ」SMPアソシエ株式会社様

    ASCA社員×コアバリューについて

    https://note.asca-co.com/n/n0d4ccf140966

  • 第10回:文献引用とAcknowledgementは論文には欠かせない!ASCA Academyライティング講座 論文コース

    第10回では、文献引用とAcknowledgementの書き方を解説します。文献引用は論文の信頼性を高めるために重要であり、研究に貢献した人々や利益相反、AI使用を明示するためにAcknowledgementは必要です。これらの要素を正しく理解し、質の高い論文作成を目指しましょう。

    第10回の視聴はこちらから

    第10回自分主導で考えよう!文献引用のコツとAcknowledgement

    1. 文献引用の方法論
     ・引用の考え方
        ・文献整理の具体的な手順
    2. Acknowledgementの書き方
     ・著者になるための条件(ICMJE)
        ・著者の貢献
        ・著者未満の貢献をした人のクレジット
        ・利益相反(Conflict of Interest: COI)
        ・AI使用について(ICMJE)

    ※キャンペーン料金は7月31日までにお申し込み、決済完了分が
    適用対象です。お早めのお申し込みをお待ちしています!

    学びたい気持ちを応援!
    ASCA Academy 論文ライティングコース
    <受講料>3,300円(税込)/1講座(通常価格:4,400円(税込))
    ※7月31日までにお申し込み・決済完了分

    <視聴可能期間> 

    申し込み完了時から30日間
    (購入時から30日後の同時刻まで、繰り返し視聴いただけます。)

    <講座テキストについて>

    お申し込み・決済完了後は、講座内で使用するテキストスライドの
    ダウンロードが可能です。
    ※注意:印刷や書き込みはできませんのでご了承ください。

    <ご利用案内>https://note.asca-co.com/n/na92806ba5419
    <よくある質問(Q&A)>https://note.asca-co.com/n/n17e218658ce3

    ご意見やご感想がございましたら、是非事務局までお聞かせください。
    ASCA Academy事務局:asca_academy@asca-co.com

  • パートナーさん訪問記 パート1

    ASCAのパートナーさんの多くは東京や大阪近郊にお住まいですが、遠方にお住まいで普段なかなか直接お会いする機会がない方々もいらっしゃいます。私たちのプロジェクトを支えてくださる皆様への感謝をこめて、今回、北海道・東北地方を訪れましたので、ご報告します。


    毎日の業務はメールと電話があれば問題なく進めることはできますが、直接お会いすることでしか話せないこともあります。今後の要望などについてお話を伺ったり、わたしからも日々の翻訳業務で感じている疑問に可能な範囲でお答えしたり、時にはプライベートな話題に花を咲かせたりと、大変貴重な時間をいただきました。

    まずは北海道で翻訳業務を担当してくださっている日高さんと黒崎さんです。

    黒崎さんは2008年にASCAに登録後、論文や治験関連文書などの英日翻訳者として幅広く対応されています。日高さんは2023年の登録ですが、他の翻訳会社での経験が長く、即戦力として毎日多くの案件に携わってくださっています。
    訪問当日は、札幌のパークホテルでランチを共にしました。中島公園の美しい景色と美味しいパスタを楽しみながら、和やかな雰囲気の中でお話をすることができました。
    「道内で同業者の方と会うのは初めてなので、こういう機会を作ってくれてありがとうございます」と日高さん。黒崎さんも「直接お礼を言っていただけるなんて、とても嬉しいです」と話してくださいました。

    次にお会いしたのは、宮城県にお住まいの若原さん。

    若原さんは2012年にASCAに登録後、医療施設向けのレターや患者向け同意説明文書などの英日翻訳を担当されています。
    青葉山公園の新緑を背景に仙台国際センターに隣接するカフェでお茶をしながら、「翻訳初心者のわたしにフィードバックを繰り返しながらお仕事を依頼してくれたASCAに感謝しています。今はまだいろんな制約がありますが、いつかはもっと多くの翻訳の仕事に関りたいと思っています!」と話してくれました。

    今回の訪問を快く受け入れてくださった皆様に心から感謝申し上げます。皆様のご協力があってこそ、私たちのプロジェクトは成功しています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    次回の訪問記もお楽しみに。


    ASCAは一緒に成長できるパートナーの方を募集します。
    医学・医薬分野における翻訳・ライティング市場において、医学研究の進歩に伴う専門性の高度化への対応と、グローバル化に伴うスピードアップが求められています。ライフサイエンス分野におけるTotal Solution Provider No.1を目指すASCAのビジョンを達成するために、ASCAとともに成長していける方を求めます。

    https://asca-co.com/recruit/partner.html

    パート2はこちらから

    https://note.asca-co.com/n/n12dd3d4ba2ec

    ASCA30th記念サイトはこちら

    https://www.asca-co.com/30th/