また、「RSVワクチンがゴール間近(RSV vaccines near the finish line)」というニュースも嬉しくなる。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対する2つのワクチンの大規模臨床試験によって、これらのワクチンが、感染症によって最も大きな打撃を受ける2つの集団、すなわち乳児と高齢者を安全に保護できることがついに示された。いずれのワクチンも、60歳以上の高齢者において、重篤な副作用を引き起こすことなく、重症疾患を予防した。1つのワクチンはさらに、妊娠後期の母親に投与して、抗体が胎児に移行するようにした場合、6ヵ月にわたり乳児を保護したという。50年前の実験的候補ワクチンの臨床試験の反応には問題があったが、原因を突き止めながら研究チームは、新しい手法を編み出した。GSK社とPfizer社が実施した今年の試験から報じられた良い結果によって、この戦略が正しいことが示され、Janssen Pharmaceuticals社とBavarian Nordic社は、それぞれ独自の高齢者向けRSVワクチンの有効性試験を実施中であり、いずれのワクチンも、開発の初期段階で良好な成績を示しているというから、母親へのワクチン接種が可能になる日は遠くない。
「ウイルスが多発性硬化症の原因と判明した(Virus fingered as cause of multiple sclerosis)」というニュースも衝撃的だ。研究者らは、膨大な量の軍の医療記録に基づいて、一般的なヘルペスウイルスの一種が、免疫系により神経細胞が攻撃を受ける疾患である多発性硬化症(MS)において不可欠な役割を果たすことを明らかにした。今回の知見は、この謎の疾患に対して治療または予防を行う新たな方法につながる可能性がある。多発性硬化症の患者は世界中に280万人おり、軽度の症状(霧視、疲労、しびれなど)を示す患者もいる一方、徐々に会話や歩行ができなくなる患者もいる。今回の研究で、現在臨床試験が行われているEBウイルスに対するワクチンの1つがもし有効であることが示され、世界中の子供たちに投与されるなら、いつの日か多発性硬化症も、ポリオのように事実上根絶されるかもしれないという。
「米国で画期的な気候法が可決される(United States passes landmark climate law)」というニュースに驚きながら、期待もする。
「200万年前のDNAから古代の生態系を復元(Ancient ecosystem reconstructed from 2-million-year-old DNA)」したという。 最近まで、DNAの保存可能期間は約100万年間とされ、それ以前よりもはるか昔の遺伝物質は著しく劣化するため、解読は極めて難しいだろうと考えられてきた。2022年、少なくとも200万年前に遡る小さなDNA断片群をグリーンランド動植物極地砂漠の凍土から抽出された。研究者らは、環境DNA(eDNA)には失われた世界を復元する力があることを実証したという
いくつかの「BREAKDOWNS」ニュースもある。 「ゼロコロナ政策はすでに機能していない(Zero COVID no longer works)」として北京などの都市では11月、人々は政府の厳しいゼロコロナ政策に対して街頭デモを行った。 当初、中国のゼロコロナ政策は成功だった。しかし時が経つにつれて、その厳しいロックダウン政策によって中国経済は圧迫され、国民の不満も鬱積した。この政策はまた、公衆衛生にとってはほぼ間違いなく有害無益であった。政府は12月、遅まきながら制限緩和に乗り出したが、正式にはゼロコロナ政策をやめたわけではない、と。
「科学は緊張関係にある国々を結び付ける(Science ties fray)」として、欧米と中国の緊張関係や、ヨーロッパとウクライナ、ロシアの問題である。研究が中止、縮小などだけでなく、大国の首脳たちは、共同研究に門戸を開けているようにも見え、こうしたが進んでいる側面も紹介されている。クリーンエネルギーへの支出が世界で今後10年間、少なくとも50%増加するとアナリストたちは推定するが、世界のエネルギー市場の予測は危険な状態になっているとも指摘している。
“Reconstitution of a minimal motility system based on Spiroplasma swimming by two bacterial actins in a synthetic minimal bacterium” SCIENCE ADVANCES, 30 Nov 2022, Vol 8, Issue 48 DOI: 10.1126/sciadv.abo7490
新年1月12日、「自分の心身を自分で守ろう!フリーランス翻訳者のための健康管理術」と題し、「第3回JTF関西セミナー」が開催された。翻訳者と翻訳会社社員のための健康管理術について、熊本大学大学院生命科学研究部 神経精神医学講座 准教授 朴秀賢先生から、女性ホルモンと女性の健康について、一般社団法人SRHR Japan代表(SRHR:Sexual and Reproductive Health and Rights)、NPO法人女性医療ネットワーク副理事長、京都大学医学部附属病院の女性ヘルスケア外来を担当されている池田裕美枝先生から、月経痛、PMS、更年期障害についてのお話をいただいた。
Past history of obesity triggers persistent epigenetic changes in innate immunity and exacerbates neuroinflammation 過去の肥満はエピジネティック変化として自然免疫細胞に記憶され、後年に神経炎症を引き起こす