今年も Science’s Breakthrough of the Year 2023 日本語版が完成しました。こちらからご覧ください。
https://www.science.org/content/page/japanese-translation-breakthrough-year
Science誌が選んだ2023年の最も画期的な科学の発見は、
肥満の好敵手、現る
―― ブロックバスター減量薬が幅広いベネフィットを示す ――
“Obesity meets its match: Blockbuster weight loss drugs show promise for a wider range of health benefits”
肥満は個人的な苦痛であるとともに、公衆衛生上の危機でもある。肥満や過体重は意志の弱さの現れであるという社会的なプレッシャー人々の意識が存在し、肥満治療薬の歴史には安全で効果的なものを見つける試みの失敗が続いてきた。しかし、新しいクラスの肥満治療薬であるGLP-1受容体アゴニストは肥満や関連する慢性疾患の減少に期待されている。
1980年代初期、GLP-1受容体アゴニストは糖尿病治療薬として開発され、大きな減量効果を示してきた。心不全や心臓発作、脳卒中のリスクも軽減する効果があるという。その後現在に至るまでGLP-1薬の利用は拡大しており、肥満だけでなく糖尿病や心血管疾患にも健康上の利益をもたらすことが臨床試験で示されている。
副作用や使用の継続の難しさという課題は残ってはいるものの、GLP-1薬の成功は肥満に対するアプローチを変え、生物学的原因を強調することで、肥満に対する人々の理解を深めてきた。その点ではどんな治療薬よりも大きな影響を及ぼしてきたといえる。さらにこの分野では、複数のホルモンの作用を模倣した、より減量効果が高いと思われる治療薬の開発もすでに始まっている。
Breakthrough of the Year 2023では、この他にも12つの画期的な研究が紹介されてます。
RUNNERS-UP
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地球の炭素ポンプが減速している “Earth’s carbon pump is slowing” 
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天然水素の探索がヒートアップ “Hunt for natural hydrogen heats up” 
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AI気象予報士の登場 “The AI weather forecaster arrives” 
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マラリア撃退の新たな希望 “New hope against malaria” 
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ついにアルツハイマー病の新薬開発がわずかに前進 “At last, modest headway against Alzheimer’s” 
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アメリカ大陸への最初の移住年代が承認に一歩近づく “Early peopling of the Americas steps closer to acceptance” 
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巨大ブラックホール群の合体から発せられる騒音 “The din of giant black hole mergers overheard” 
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若手科学者たちが立ち上がる “Early-career scientists rise up” 
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エクサスケールコンピューティングの時代の幕開け “The dawn of exascale computing” 
BREAKDOWNS
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米国南極プログラムのメルトダウン “U.S. Antarctic meltdown” 
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COVID-19の余波 “COVID-19 aftershocks” 
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超伝導体の主張が抵抗にあう “Superconductor claims hit resistance” 
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ツイッター上で研究が水の泡となる “Research on Twitter goes down the drain” 
いずれの記事も有能な翻訳者らの手によって、読者に伝わりやすい日本語版として仕上げられました。この場を借りて感謝の意を表します。
文:Science Japan Office
英語版は下記よりご覧いただけます
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