
■ スポンサーセッション
演題:Bridging Science and Business: A Corporate Perspective on Collaboration(科学とビジネスの架け橋:協力に関する企業の視点)
演者:神田浩幸氏
株式会社リガク プロダクト本部ライフサイエンス グローバルプロダクトリーダー兼) プロダクト本部 副本部長
株式会社リガクの神田浩幸氏は、「科学とビジネスの架け橋:協力に関する企業の視点」と題した講演を行った。彼は、科学技術の革新を推進する上で、産業界・学界・政府の協力が不可欠であることを強調した。神田氏は、1951年に設立され、東京に本社を構えるリガクの概要を紹介し、特にX線技術を中心とした科学機器の製造に特化していることを説明した。

神田氏は、「Labo to Fab(ラボからファブへ)」という概念を紹介し、これは研究室での基礎研究を製造・商業化へと移行させるプロセスを指すと述べた。その具体例として、リガクと日本電子(JEOL)の協力によって開発された電子回折システム「Synergy-ED」を挙げた。このシステムは、ナノ粒子から分子の3次元立体構造を決定することを可能にし、医薬品研究に新たな知見をもたらす。プロジェクトは2020年5月25日に開始され、1年以内に完成・市場投入された。この迅速な開発は、協力の効率性を示す好例であると神田氏は述べた。

また、研究開発の初期段階における学界の役割についても言及し、京都大学の北川進教授からの貴重なフィードバックを紹介した。Synergy-EDの試作機を用い、北川教授の研究室メンバーと協力し、早期の概念実証が行われた。後日、Synergy-EDの試作機は北川研究室に導入され、現在も活用頂いている。神田氏は、日本の科学レベルは高いものの、欧州の研究者と比較して日本の科学論文の投稿数が少ないことを指摘し、その要因として予算の制約、機動力の不足、知的財産管理の課題を挙げた。
神田氏は、学界や産業界の偏りを排除し、政府が中立的な調整役となる「オープンイノベーション・プラットフォーム」の創設を提案した。このようなプラットフォームがあれば、財政支援や規制の柔軟性といった課題に対応し、迅速な意思決定と活動が可能になると述べた。そして、科学とビジネスの架け橋を築くためには、真の協力が不可欠であり、それが人類の発展に貢献すると強調した。
質疑応答では、JEOLとの協力が両社の経営陣の議論から生まれたことを説明し、有望なプロジェクトや製品を特定するためには、議論の機会を持つことが重要であると述べた。最後に、神田氏は、科学的発見を実世界の応用へと変える上で協力の重要性を改めて強調し、リガクが今後もこのような取り組みに尽力していくことを表明した。
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